2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21700289
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
黒島 妃香 京都大学, 文学研究科, 研究員 (10536593)
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Keywords | 自己理解 / 他者理解 / 意図理解 / 社会的知性 / 霊長類 |
Research Abstract |
本年度、申請者はフサオマキザルを対象とし、自己の経験が他者への向社会的行動(思いやり行動など)に及ぼす影響を調べるために、トークン交換行動を用いた研究を行った。サルは、ヒト実験者にトークンを渡すことによって、餌を得ることができた。実験1では、トークン交換行動を既に獲得している個体(パートナー)の隣にトークン交換行動未獲得の個体(被験体)を配置し、パートナー個体がトークンを所持していない時、被験体は自分が所持しているトークンをパートナーに渡すかを調べた。結果、積極的にトークンをパートナーに受け渡す個体はいなかった。実験2では、すべての個体にトークン交換を訓練した上で、パートナーが、1)独占トークン(自分だけが報酬を得られるトークン)のみを持っている、2)共有トークン(自分と相手が同時に報酬を得られるトークン)の1みを持っている、3)共有と独占トークンを各1個持っている、4)トークンをもっていない、5)パートナー不在条件で、常に共有と独占トークンを1個ずつ持っている被験体がどのように振舞うのかを調べた。結果、パートナーがトークンを持っていない条件で、チャンスレベルよりも多く独占トークンを使用するという利己的な行動が見られた。しかし、パートナーがトークンを持たない状況で実験者からトークンを催促されると、2/6個体が積極的なトークンの受け渡しを示した。実験1との比較から、この結果は、相手に必要な援助は自分が経験してみないと理解できないことを示しているのかもしれない。また、ヒト幼児を対象に、自己の経験と他者の行動の予測に関する研究を行った。幼児はカーテンで仕切られた一方の部屋でおもちゃを4つのバケツの一つに隠す。それを隣部屋で待機していた実験者が探しにきた。幼児は、カーテンに穴が開いていて隣の部屋から覗けることを知っている群と、穴はあるが覗けないことを知っている群に分けられた。自分が隣の部屋から覗いた経験を持つ5歳児は、他者にも覗かれているかもしれないと予測することがわかった。これらの研究は現在投稿準備中である.
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