2009 Fiscal Year Annual Research Report
食べ物の匂い入力に対する嗅皮質ニューロン発火活動の再活性化の解析
Project/Area Number |
21700429
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
眞部 寛之 The University of Tokyo, 大学院・医学系研究科, 特任研究員 (80511386)
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Keywords | 嗅覚 / 電気生理 / 嗅皮質 / 睡眠 / sharp wave |
Research Abstract |
自由行動下ラットの嗅皮質からユニット活動と局所脳波を測定するために、5-10本のテトロード極小電極を個別に動かすことのできるマイクロドライブを自作した。また、海馬局所脳波、嗅球局所脳波を嗅皮質ユニット活動、局所脳波と同時に測定できる系を確立した。ラットに睡眠、食餌、食事後睡眠と決まった行動を取らせながら、局所脳波、ユニット活動を記録した。 ラットが徐波睡眠状態のとき、嗅皮質局所脳波にイレギュラーなsharp waveが見られることを発見した。このsharp waveは海馬で見られるsharp waveと類似していたため、「嗅皮質sharp wave」と名づけた。また、多くの嗅皮質ニューロンはこのsharp wave中に協調して発火することが分かった。海馬sharp wave中に、睡眠直前に経験したニューロン群の発火パターンがリピートされることが知られており、このリピートによって空間記憶やエピソード記憶の固定化がなされると考えられている。このことから、嗅皮質sharp wave中には睡眠直前に経験した匂い情報に基づく発火パターンのリピートが起こっているのではないかと予想される。また、嗅皮質sharp waveは海馬で見られるsharp waveとはほぼ独立した起源を持つことが分かった。嗅皮質sharp waveでの再活性化現象は、空間記憶やエピソード記憶以外の記憶に関する情報処理に関わっているのかもしれない。 これまで、嗅皮質の情報処理機構に関してはほとんどわかっていなかった。本研究の発見を通じて、嗅皮質情報処理メカニズムの一端が解明されるものと期待される。また、海馬の情報処理機構と比較していくことで、記憶メカニズムの更なる理解に繋がると期待される。今後は、睡眠直前の嗅皮質ニューロン群の発火パターンが嗅皮質sharp wave内でリピートされているのかどうかを検証していく。
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