2009 Fiscal Year Annual Research Report
蛋白質・エネルギー低栄養状態が脳内環境に及ぼす影響
Project/Area Number |
21700763
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
桑波田 雅士 Kyoto Prefectural University, 生命環境科学研究科, 准教授 (30304512)
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Keywords | 低栄養 / アルブミン / 認知症 |
Research Abstract |
現在、認知症患者の約70%はアルツハイマー病であり、アミロイドβタンパク質複合体の脳内蓄積(老人斑)がその発症に深く関与している。培養細胞を用いた研究から、血漿中に最も多量に存在するタンパク質であるアルブミンが、アミロイドβタンパク質の蓄積を阻害する可能性が示唆されていた。アルブミンは脳脊髄液中にも存在することは知られていたが、血漿中のアルブミンが脈絡叢の毛細血管を介して移行していると考えられていた。アルブミンは肝臓で合成されるタンパク質であるが、近年の研究から、脳ミクログリア細胞がアルブミン合成能を有することが報告された。肝臓アルブミン合成は、栄養状態の変化に強く影響されることが知られている。SD系雄性ラットを5%カゼインからなる低蛋白食、あるいは20%カゼインを含有するコントロール食で1ヶ月間飼育し、肝臓および脳内アルブミン遺伝子発現について検討した。低蛋白食で維持したラットは食餌摂取量が減少し、体重増加も少なかったことから、蛋白質・エネルギー低栄養状態(protein-energy malnutrition : PEM)にあると考えられた。低蛋白食で維持したラットでは、血漿アルブミン濃度の低下とともに肝臓アルブミン遺伝子発現量の減少が認められた。脳におけるアルブミン遺伝子発現を検討したところ、肝臓での発現調節同様、低蛋白食摂取により減少する傾向が認められた。すなわちアルツハイマー病の発症に対し、脳内アルブミン遺伝子発現を介して栄養状態が影響を及ぼす可能性も考えられた。今後、脳脊髄液中のアルブミン濃度およびアルブミン分子の修飾状況を検討する必要があると思われる。
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