2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21710102
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
合田 義弘 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 助教 (50506730)
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Keywords | ナノ材料 / 表面・界面物性 / 格子欠陥 / 磁性 / 物性理論 / 第一原理計算 |
Research Abstract |
窒化ガリウム(GaN)等の窒化物半導体は発光デバイスのみならず、スピントロニクス材料の候補としても重要であり、実際GdやCrをドープしたGaNでは室温強磁性が報告されている。我々は第一原理計算による理論解析により、GdをドープしたGaN中におけるスピン分極したGa単原子空孔間の強磁性的相互作用が実験的に測定された巨大磁気モーメントの起源となっている事を明らかにした。しかしながら、窒化物半導体に対しては複空孔の性質に関してこれまで調べられていない。そこで我々は、GaN複空孔のスピン状態及び荷電状態を密度汎関数法により明らかにする事を試みた。原子構造を最適化した結果、Ga-N複空孔は2つの準安定な原子構造を取り得る事が分かった。その構造安定化のメカニズムとしては原子変位による電荷移動と交換分裂によるエネルギー利得があり、両者の微妙なバランス関係により二つの安定構造が存在する事が分かった。また、バルク中のスピン分極とは対照的に、窒化物半導体ヘテロ界面におけるスピン分極の可能性に関しては、まだ検討されていない。そこで、格子整合性の高い窒化物半導体/ホウ素化合物界面に着目し、密度汎関数法による第一原理計算により界面スピン状態を検討した。AlN/Mg2(0001)界面に対して得られたエネルギーバンド構造によれば、界面では強磁性状態が再安定となり、界面の窒素原子あたり0.69μBの磁気モーメントが得られた。さらに我々は、強磁性状態の起源は窒素原子の2p状態のスピン分極によるものである事を明らかにした。また、GaN/ZrB2(0001)界面に対する検討も行い、より大きな振幅を持つ金属誘起ギャップ状態(MIGS)による遮蔽のため、この界面ではスピン分極が起こらない事が分かった。ただし、GaN/ZrB2(0001)界面においても固有欠陥を導入する事により、スピン分極が起こる可能性が考えられる。
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