2009 Fiscal Year Annual Research Report
国家の開発政策・環境保護政策への地域住民の対応:中国海南島における調査研究
Project/Area Number |
21710252
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
蒋 宏偉 National Museum of Japanese History, 研究部, 外来研究員 (50436573)
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Keywords | 中国 / 生態人類 / 環境保全 / 開発 / 土地利用 / GIS応用 |
Research Abstract |
平成21年度中に、研究代表者は、2回に分けて、研究対象となる中国海南島の華僑村落に住み込み、時系列のデータ(生態史復元)を中心とした現地調査を実施した。それに関わる問題は、(1)1949年以降の対象村落の生業構成および変遷、(2)対象村落の環境利用の定量的把握(衛星データ及びGIS技術を用いた世帯ごとの土地利用変化の解明)、(3)過去60年間対象村落世帯ごとの人口変動(村落の「家譜」(系図)を照らし、世帯人口にかかわる諸イベント(出生、死亡、移入、移出、移住先)解明及びデータベース化);(4)対象村落に取り巻く政府政策変遷、などである。時系列的な復元に関するデータは、政策がどのような道筋で人々の生活および彼らが依存している自然環境に影響を与えているという問題と、華僑の移住はどうのように出自の村落に影響したかという問題の解明に寄与する。現段階で明らかにしたのは、過去60年間の村落生態史は大きく三時期に分ける事ができる。つまり、人民公社以前(1956年以前)、人民公社時代(1949年~1982年)、市場経済化時代(1982年~)。かいつまんで言えば、それぞれの時代は以下の特徴を持っている。それは、海外移住による環境負荷の低減及び移住者による在村者への生活支援(1956年以前)、政府主導による農業生産の集約化及び農地拡大(人民公社時代)、華僑資本及び政府主導による農村開発(市場経済化時代)、である。このようなプロセスは海南島だけでなく、南中国でひろく分布している「僑郷」(華僑の故郷)に普遍的に起きていると考えられる。政府政策、海外移住者(華僑)及びその背後に存在する海外のネットワークは、どのように村落の社会・自然環境を影響しているのを分析し、人々の健康と両立する農村開発および森林環境保護のためのモデル構築に基礎的な知見を提供する。
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