2010 Fiscal Year Annual Research Report
国家の開発政策・環境保護政策への地域住民の対応:中国海南島における調査研究
Project/Area Number |
21710252
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Research Institution | Research Institute for Humanity and Nature |
Principal Investigator |
蒋 宏偉 総合地球環境学研究所, 研究部, プロジェクト研究員 (50436573)
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Keywords | 中国 / 開発 / 人類生態学 / 土地利用 |
Research Abstract |
平成22年度は、2回に分けた、調査対象地の海南島沿岸地域の村落で現地調査を行ってきた。調査はデータの更新及び対象村落住民生活の現状把握(食物摂取及び住民生活満足度などに関する調査)を中心としていた。特筆すべき調査結果は、2009年末以降に急ピッチに展開されてきた開発である。2009年12月に、海南島は中国政府に「国際観光島」と認定され、国家プロジェクトのみならず、民間から巨大な投機マネーは同島に入り、沿岸村落はほとんど例外なく開発に巻き込まれた。2010年はじめからの海南島開発は大きく2種類に分けることができる。つまり、第一、政府主導の住民生活持続性重視型と、第二、民間主導の補償金大量投入型である。第一に関して、代表的なものは、海南省政府が行ってきた「高速鉄道プロジェクト」である。政府は鉄道の建設用地を徴用するために、地域住民に土地利用補償金を支払った以外に、鉄道株及び周辺地域のインフラ整備も行ってきた。こうした開発型は、住民が受け入れる補償金の金額が少なく、現状に満足できる住民の割合が低い。一方で、こうした開発では、住民が農業を中心とした生業を維持でき、社会の変化が比較的に緩やかである。第二に関して、代表となるのは沿岸部T村に行われている観光開発プロジェクトである。ある業者はT村にある沿岸の土地をすべて買い占めた。土地買収にともなって、村落住民は人当たりに数十万元の補償金は分配された。しかし、村落住民はほとんど短期的な消費活動(飲食、娯楽など)に土地買収資金を費やしていた。現時点の調査では、ほとんどの住民が現状に満足しているものの、今後、村人の生業をどのように変化していくのはまだ不透明である。海南島で起きている開発現象はある意味でいえば、中国全域に及ぼしている開発ブームの短期的に(1年間)おきた濃縮版であり、中国ないしアジアの開発問題を考えるのに、これらの調査事例は有益な経験を提供できる。
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Research Products
(2 results)