2010 Fiscal Year Annual Research Report
近代国家の建設と内務省の衛生行政-長與專齋の衛生行政論を手がかりとして-
Project/Area Number |
21720243
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Research Institution | Chubu Gakuin University |
Principal Investigator |
小島 和貴 中部学院大学, 人間福祉学部, 准教授 (50286217)
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Keywords | 長與専齋 / 内務省 / 衛生行政 / 衛生事務諮問会 / コレラ / 近代国家 / 明治国家 / 行政史 |
Research Abstract |
本研究は、近代国家とりわけ明治国家の建設過程における内務省衛生行政の位置づけ及びその構造を検証することを目的とするものであり、前年度の研究を踏まえながら、長與專齋の衛生行政論を手がかりとしながら研究を進めた。 22年度は、前年度の研究を継続しながらまず、長與專齋の衛生行政論と内務省衛生行政についての研究成果の一端を「衛生行政史」に反映させることができた。ここでは前近代との連続と断絶の視点も加味しながら、近代衛生行政を描くこととなった。次に長與專齋の衛生行政論を踏まえながら内務省衛生事務諮問会の研究を進めた。長與により近代衛生行政の創設が試みられる一方、明治政府は明治10年よりコレラの流行に悩まされた。明治12年には10万人以上が鬼籍へと追いやられることとなった。この甚大な被害をもたらしたコレラに対する対策を通じ、中央衛生会、地方衛生会、町村衛生委員制度の創設等を観たことで長與の衛生行政論の一端が実現した。明治10年、12年のコレラ対策では内務省衛生局が中心となったが、一方で長與の構想をより実効的なものとするためには、地方衛生吏員の理解と協力が必要であり、そのために地方衛生行政の再編が求められた。そこで明治16年には内務省衛生事務諮問会が開催され、各地方の衛生課員、病院長等が召集され、衛生事務手続きの確認が求められることとなった。同諮問会開催の経緯を跡づけることで長與專齋の衛生行政論及び内務省の衛生行政を論じるにあたって従来等閑に付されてきた明治16年の内務省衛生事務諮問会の意義を確認することの重要性を見いだすこととなった。
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