2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21730057
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
今川 奈緒 佛教大学, 社会福祉学部, 講師 (60509785)
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Keywords | 障害者教育法(障害児教育法) / IDEA(アメリカ合衆国障害者教育法) / 手続的保護 / 手続的デュー・プロセス / 無償かつ適切な公教育 / 合理的配慮 / 過重な負担 |
Research Abstract |
障害児教育において「適切性」と「インクルージョン」の保障は核となる理念なのであるが、これらの理念を障害児の教育を受ける権利として考える場合、その実体は漠然としたものとなる。特に「適切性」は個々人の教育的ニーズにより異なるものであり、これについて具体的な法的基準を定めることは困難である。したがって「適切性」の判断は、個々の事例に委ねられることになるのであるが、その際に重要となるのが決定手続きであると考えられる。適正な「適切性」を導き出すためには、障害児本人や保護者の意見をはじめ、教師や医者等の専門家、教育委員会等の行政側の意見を総合的に判断する必要が出てくるが、現在の日本の法制度においては、障害児本人や保護者の意向を反映させる手続きが十分に整備されていないと考えられる。アメリカ合衆国においては障害者教育法(IDEA)の中で、詳細な手続制度が定められており、かつそれに関連する裁判例の蓄積も豊富であるため、前年度に引き続き、今年度も手続上の法制度、裁判例について検討を進めてきた。本年度はこれに関する研究成果として、「障害者教育法における手続的保護の重要性」社会福祉学部論集第7号(2011年)や、「IDEAの概要と展開:訴訟要件に関連して」「合理的配慮に関する裁判例及び行政救済機関の仲裁例(アメリカ合衆国・教育)」『内閣府 障害者の社会参加推進に関する国際比較調査研究報告書』(2010年)を発表した。前者においては、IDEAの法制度、特に手続制度について詳細な検討を行い、障害児教育において「無償かつ適切な公教育」を提供する際の手続的保護の重要性を明らかにした。後者においては、IDEAに関する裁判例をカテゴリーごとに分類し、連邦最高裁判例を中心にリーディングケースとなった裁判例について検討を行った。これらの研究成果は、日本の障害者教育法において法理論上、障害児への適切な教育の保障を検討する場合に有効な判断要素となると考えられる。
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