2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21730073
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
垣内 秀介 The University of Tokyo, 大学院・法学政治学研究科, 准教授 (10282534)
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Keywords | 和解 / 訴訟上の和解 / 裁判官の役割 / ADR / 比較法 |
Research Abstract |
平成21年度においては、研究実施計画にしたがって、訴訟上の和解の効力をめぐる日本の従来の議論を総括する作業を進めるとともに、ドイツ法・フランス法に関して、本研究の全体にとって基本的な知見を得るように努めた。そのうち、研究成果として挙げるべき点としては、次のものがある。 第一に、訴訟上の和解の法的性質論との関係では、従来の議論の対立点が、訴訟上の和解に実体法上の和解とは異なる訴訟行為の存在を見出すかどうか、また、そうした訴訟行為の効力が、その前提として想定し得る実体法上の和解契約の暇疵によって影響を受けることを認めるかどうか、という点にあることを確認し、これらの観点からは、合意を裁判外の和解にとどめるか、それとも訴訟上の和解として処理するかについて、当事者による選択を認めつつ、そうした選択に伴う拘束力を正当化する枠組みとして、ドイツの現在の通説である両性説ないし日本の多数説である新併存説に積極的な意義を見出し得ることを明らかにした。 第二に、訴訟上の和解の効力論の関係では、現行日本法において効力の発生が和解の調書記載を要件としていることの意義について検討し、明治23年民訴法やその母法となったドイツ法の規定振りからすれば、調書記載は主として執行力を念頭に置いた規律であると理解され、したがって、理論的には、訴訟終了効に関しては別異に解する余地が存在すること、ドイツにおいても、訴訟終了効は調書記載を待たず両当事者の期日における陳述によって直ちに発生するとの見解が、かつての多数説であったが、近年は、調書記載によって初めて訴訟終了効を生ずると解する見解が多数を占めているとみられることを明らかにした。 なお、日本における裁判上の和解及び調停の現状及び課題について、フランス・パリにおいて2009年10月16日から17日にかけて開催された第1回司法調停会議において報告を行った。
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