2010 Fiscal Year Annual Research Report
北欧における医療事故苦情処理制度および医療者の懲戒制度に関する研究
Project/Area Number |
21730106
|
Research Institution | Hokkai-Gakuen University |
Principal Investigator |
千葉 華月 北海学園大学, 法学部, 准教授 (90448829)
|
Keywords | 医療事故 / 医療過誤 / 医療事故の予防 / 医療基本法 / 医療安全 / 懲戒制度 / スウェーデン / 北欧 |
Research Abstract |
本研究では、北欧における医療事故苦情処理制度および医療者の懲戒制度を検討し、医療事故に関わる法制度を概観することにより、我が国における医療事故に関する法制度の在り方について考察した。北欧では、医療事故に関する補償制度が導入されている。当該制度は、医療者に対する責任を分離した制度として構築されていることから、医療事故に関する情報が収集されやすく、原因分析と医療事故の抑止にも役立っている。他方、北欧では、医療事故苦情処理制度および医療者の懲戒制度についても整備されている。近年、デンマークとスウェーデンにおいて、法改革が行われ、特に医療安全に関わる議論が活発に行われている。スウェーデンでは、これまで、患者らが医療に関する苦情がある場合には、(1)患者オンブズマン、(2)患者委員会、(3)医療者の懲戒、免許の取り消し等の問題を審査・決定する保健・医療責任委員会、(4)社会福祉庁に申立てを行うことができたが、2011年、医療安全法が施行され、同法に基づき、患者らの苦情は原則として社会福祉庁に申立てられることになった。現行法下では、全ての事案が社会福祉庁により原因解明のために調査され、医療事故抑止のために役立てられている。現在、我が国でも、産科医療補償制度が創設され、大学病院等における医療事故の報告の義務づけ等の医療安全推進のための取り組みも行われ、医療事故における被害者の救済と医療事故の予防、再発防止を実現できる制度が模索されている。北欧の医療事故に関わる法制度、特に医療事故苦情処理制度および医療者の懲戒制度の研究成果は、我が国の医療事故に関わる法制度の今後を考える上で参考になると思われる。今年度は、特にスウェーデン医療事故苦情処理制度および医療者の懲戒制度について検討を行い、その研究成果を学会で発表し、学会誌に公表した。スウェーデン以外の研究成果については、今後、公表する予定である。
|