2010 Fiscal Year Annual Research Report
未上場企業向け融資市場における排他的情報生産の計測
Project/Area Number |
21730268
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
小倉 義明 立命館大学, 経営学部, 准教授 (70423043)
|
Keywords | 金融論 / 中小企業金融 / リレーションシップバンキング |
Research Abstract |
中小企業向けアンケート調査(経済産業研究所2008年2月)の個票データを用いて,昨年度に実施した,ある企業への融資を巡って競合する金融機関の間の情報力の差が融資金利、および金融機関の超過リターンに与える影響の統計的検証の精緻化・拡張を行った.まず分析上重要な変数の定義を修正(単一の金融機関から融資を受けることを示すダミー変数の定義)したところ,昨年度の分析と同様に,企業の属性,企業が各金融機関から受けている融資以外のサービス,担保・保証条件などの要因,あるいは単一機関融資となる可能性の内生性をコントロールした上でも,前者の方の融資金利が統計的に有意に高く,平均年率0.5%程度の超過リターンが上乗せされていることが明らかとなった.融資金利のサンプル平均が1.9%であることから,この上乗せ幅は経済的にも無視できない.さらに,このような超過リターンの決定要因を詳細に統計的に検証したところ,最も関係の強い銀行が他行よりも情報有意に立っていることだけでは充分ではなく,情報優位に立つ銀行がさらに一歩踏み込んで借り手の「一時的な」資金繰り困窮時に再交渉に柔軟に応じる可能性が高いと,借り手が信じている場合にのみ,そのような超過リターンが発生していることが明らかになった.このことは上記超過リターンが将来の一時的資金繰り難に対する保険プレミアムとして機能していることを示唆している.さらにサブサンプル分析から,融資市場が競争的で,最も関係の強い金融機関の組織規模が小さい場合に,このような超過リターンが大きい傾向を持つことが明らかとなった.
|
Research Products
(5 results)