2011 Fiscal Year Annual Research Report
未上場企業向け融資市場における排他的情報生産の計測
Project/Area Number |
21730268
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
小倉 義明 立命館大学, 経営学部, 准教授 (70423043)
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Keywords | 金融論 / 中小企業金融 / リレーションシップバンキング |
Research Abstract |
本研究は,金融機関と融資先企業の長期的取引関係(いわゆるリレーションシップバンキング)が,(1)金融機関にもたらす準レントを計測すること,(2)それが金融機関の新規参入企業向け融資に対する積極度,及び(3)金融機関の財務健全性に与える影響を統計的に計測することを目的としている.これまでのところ(1)と(2)について,政府機関によるアンケート調査の個票データを用いた統計分析により,一定の明確な実証結果を得るに至っている.具体的には,2007年中の中小企業向け短期融資における上記準レントは,概ね0.5%程度で統計的に有意に正であるだけでなく,当時の中小企業向け短期融資金利の中央値が2%程度であった点より,経済的にも無視できないものであることが明らかとなった.長期的取引関係から得られる金融機関の準レントの発生原因として,他の金融機関に対する情報優位,さらにその情報優位を活用して適切かつ柔軟な融資条件再交渉が行う用意のある金融機関であるとの評判,あるいは企業業績を向上させうるような効果的な経営アドバイスを行う能力の3つの要因がこれまでの理論研究により指摘されてきたが,本研究の実証結果は,このうちとくに2番目の要因が上記準レントの発生に強く作用していることを明らかにしている.このような準レントは,メインバンクが地方銀行あるいは信用金庫であるときに値が大きい一方でメインバンクが大手銀行である場合はほとんど生じていないこと,融資市場の集中度が低く競争的な市場で値が大きいことなども明らかとなっている.なお,開業時に同じような属性を持つ企業であっても,地方銀行あるいは信用金庫の融資市場占有率が高く上記準レントが平均的に高い地域で開業した企業の方が統計的に有意に融資を受けるタイミングが早いことも明らかとなった.
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Research Products
(4 results)