2009 Fiscal Year Annual Research Report
『儒教と道教』の理解社会学的解釈によるヴェーバーの東アジア論の再構成
Project/Area Number |
21730405
|
Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
荒川 敏彦 Tokyo University of Foreign Studies, 外国語学部, 研究員 (70534254)
|
Keywords | マックス・ヴェーバー / 宗教社会学 / 宗教発展論 / 理解社会学 |
Research Abstract |
本年は、『儒教と道教』と同時期に執筆され、かつ相互補完的であるとヴェーバー自身によって言及されたテキストである『宗教社会学』を、理解社会学的方法に即して解釈することを主な課題とした。近年、『宗教社会学』を含む『経済と社会』<旧稿>の再検討が進みつつある。しかしヴェーバーの宗教社会学の解釈状況は、今なおプロテスタンティズム中心主義というべき状況にある。本年度はとくに『宗教社会学』の中でも、これまで宗教進化論として理解されてきた前半の解釈を検討した。『儒教と道教』には、『宗教社会学』前半の参照が推測される箇所があり、本研究課題に直接的な関連を持つ箇所である。ヴェーバーは『宗教社会学』のなかで、超感性的力の形成が多様であることを記述している。この点が従来、プロテスタンティズムを最高形態とする進化論として、歪められて理解されてきた。従来、宗教進化論として受容されてきた『宗教社会学』前半の記述は、「発展の理念型」と解釈することができる。このことは、すでに『客観性』論文(1904年)の段階で確認できる。しかも『宗教社会学』では、神観念の多様な形成はすでに自明のこととみなし、むしろその多様性がいかなる歴史的・社会的条件によっているのかを考察するための参照軸の構成がなされていると考えられるのである。こうして、決疑論としての『宗教社会学』の意義の一端が確認された。このような検討の一方で、本年度は、『儒教と道教」のテキスト研究(改訂跡の検討)にも着手し始めた。それによって、ヴェーバーの儒教に対する見方が、従来いわれてきたような「東洋的停滞」論と異なるものであることが、改訂跡からも明らかになりつつあるが、それについては今後もさらに検討を進めたい。
|
Research Products
(1 results)