2011 Fiscal Year Annual Research Report
『儒教と道教』の理解社会学的解釈によるヴェーバーの東アジア論の再構成
Project/Area Number |
21730405
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Research Institution | Chiba University of Commerce |
Principal Investigator |
荒川 敏彦 千葉商科大学, 商経学部, 講師 (70534254)
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Keywords | マックス・ヴェーバー / 『儒教と道教』 / 生活態度 / 宗教社会学 |
Research Abstract |
ヴェーバーが東アジア文化に視点を定めて、とくに儒教及び道教の社会的機能について考察した『儒教と道教』は、1913年(散逸版手稿)、1915年版(雑誌版)、1920年版(改訂版)と3つの版がある。そこで、現存する後二者の異同を詳細に検討した。(1)当初の4章構成が改訂で8章構成へと2倍に膨れあがったこと、とくに当初の第1章の記述が改訂によって第1章から第4章までの4章分へと拡大・分節化されたことは重要と思われる。改訂版の前半4章は「社会学的基礎」という章タイトルである。「章立て換算」で考えると、当初は4分の1にすぎなかった「社会学的基礎」の位置づけが、論集版では(8章中の4章つまり)2分の1へと重みを増したのである。『儒教と道教』をめぐる批判的議論(「中国には○○がない」式の欠如論など)の多くは、増大したテキストの前半部分に力点を置いた読解に導かれ、後半で論じられるの中心的な課題-いかなる「生活態度」が形成されたのか/されなかったのか-が十分に読み取られないために生じたとも考えられる。実際キイワードとなる「生活態度」概念の使用は、『儒教と道教』の前半ではほとんど見られず、後半で頻出することも重要な点である。(2)また、『儒教と道教』が大きく「正統」と「異端」の構図で論じられていることも再考を要する。「正統と異端」の構図は雑誌版からのものであるが、その対立と共同の構図が鮮明になり、全体を規定するまでになったのは論集版においてである。その背景には、第一に、『儒教と道教』大改訂に当たってなされただろう中国史研究の摂取の成果がある。加えて、その間に執筆された『ヒンドゥー教と仏教』における「正統と異端」の把握が影響していたとも考えられ、それを通して、ひいては「アジア」の宗教的世界を正統と異端の構図で把握するという見通しが生まれた可能性が考えられる(『古代ユダヤ教』ではこの構図は見られないし、『倫理』論文ではほんのわずか異端迫害に触れられるのみである)。
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Research Products
(2 results)