2010 Fiscal Year Annual Research Report
「平成の大合併」に伴う地域社会の共同性の変容に関する実証的研究
Project/Area Number |
21730438
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
新藤 慶 群馬大学, 教育学部, 准教授 (80455047)
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Keywords | 社会学 / 市町村合併 / 共同性 / 地域社会変動 / 住民の生活 |
Research Abstract |
平成22年度は、群馬県榛名地区(現・高崎市)における市町村合併をめぐる住民調査を分析し、前年度に行った群馬県富士見地区(現・前橋市)での住民調査との比較を行った。その結果、以下の諸点が明らかとなった。 第1に、合併の賛否を規定する主要な変数は住民の労働-生活圏であった。労働-生活圏が旧町村内に収まっていれば合併に反対する傾向が強く、旧町村外に広がっていれば賛成する傾向が強い。また居住年数については、長い方が合併に反対で短い方が賛成する傾向がみられた。居住年数が長いとうことは旧町村内での労働-生活を長く重ねているということであり、この点からも労働-生活圏の持つ意味の大きさが見て取れた。 第2に、合併の賛否は政治グループの支持のあり方とも結びついていた。榛名地区・富士見地区には、福田(赳夫・康夫)グループと中曽根(康弘・弘文)グループという2つの大きな政治グループが存在する。この両者の支持者の一方が合併賛成なら、他方は合併反対という傾向がみられた。さらに、合併の賛否は地域によって異なっていた。榛名地区では福田グループの支持者が合併賛成、中曽根グループが反対だったのに対し、富士見地区では福田グループが反対、中曽根グループは賛成であった。このことは、合併論議が合併そのものとは異なる次元でも成立していたことを物語る。 第3に、現在の住民がイメージする「地域社会」は基本的に「旧町村」であった。それゆえ富士見地区のように、合併後も地名を残すところが多い。しかし、榛名地区では、合併後には「榛名町」の地名を残さなかった。このことは、合併を主導した地域エリートが、榛名町誕生以前の旧町村に地域アイデンティティを感じていたことを示す。だが、多数派の住民は「榛名町」に地域アイデンティティを感じていた。そのため、「榛名町」を軽視する形で進んだ合併について、合併後の現在では否定的な評価を下す者が多くなっていた。
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