2011 Fiscal Year Annual Research Report
「平成の大合併」に伴う地域社会の共同性の変容に関する実証的研究
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21730438
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
新藤 慶 群馬大学, 教育学部, 准教授 (80455047)
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Keywords | 市町村合併 / 住民 / 階層 / 労働-生活圏 / 共同性 |
Research Abstract |
本年度は、岡山県新見市の住民を対象にアンケート調査を実施し、合併過程への関わりや意識に関するデータを収集した。そのうえで、これまでに実施してきた群馬県旧富士見村(現前橋市)・旧榛名町(現高崎市)における住民調査のデータとあわせて分析することで、合併過程と住民との関連のパターンがいくつか析出された。特に、住民の労働-生活圏に着目した分析からは、以下の諸点が明らかとなった。 第1に、合併の賛否には、階層との間に一定の関連がみられた。旧富士見村では、「専門管理」「ホワイトカラー」は合併賛成が相対的に多く、新見市では、「専門管理」「ホワイトカラー」は合併賛成が相対的に少なかった。 第2に、このように同じ階層で賛否に違いが生じる点には、住民の購買地域が関わっていた。旧富士見村では、「専門管理」「ホワイトカラー」の購買地域は合併相手の前橋市であることが多く、それゆえ合併賛成となっていた。一方、新見市の「専門管理」「ホワイトカラー」は、新見市を超えた範囲に購買地域を持つ者も少なくないため、新見市での合併に魅力を感じづらく、合併賛成が少ないものと考えられる。 第3に、旧榛名町では、階層と合併の賛否には関連がみられなかった。しかし、就業地域とは関連がみられた。すなわち、旧町内で就業している者ほど合併反対が多かった。このことは、生産・労働に関わる要素として、所属階層と就業地域の両者をおさえることの重要性を示している。 第4に、合併の評価は大半が合併の賛否と重なっており、賛成であるほど評価も高かった。ただし、新見市では、合併の賛否には関連がみられなかったが、購買地域が合併後の新見市だという者ほど合併の評価が高くなっていた。このことから、購買行動など地域で行われる日常生活上の諸行動が、合併後の新しい自治体との客観的・主観的結びつきを強め、新たな共同性を生じさせる可能性が見出される。
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Research Products
(3 results)