2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21730451
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
片桐 資津子 Kagoshima University, 法文学部, 准教授 (20325757)
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Keywords | 社会福祉関係 / 個別ケア / グループのもつ力 / 再生力集団モデル / 役割 / 共同 / 安心 / 自由 |
Research Abstract |
在宅ケアに比べて敬遠されがちな施設ケアの強みとは何か.それは利用者の立場からいえば,ひとつは有資格の専門家による高品質な介護サービスの享受であり,もうひとつはADL(日常生活動作)が類似した境遇の利用者同士の出会いである.しかし施設で働くケア職員は,人手不足のなかで多くの業務をおこなう.そのためこれらの強みを十分に認識・活用しているとはいえない. 本研究では,施設ケアの強みをグループのもつ力として焦点化した.この力は小規模集団や他者とのつながりのなかで発揮される.新型特養のユニットケアや,従来型特養で模索されているユニット志向ケアを調査対象に設定して,ケア職員へのインタビュー調査から施設ケアの強みを極大化する条件を探究した. 分析枠組みとして個別ケアの規範概念である「再生力集団モデル」を提唱した.これは4つの構成要素からなる.(1)役割,(2)共同,(3)安心,(4)自由である.これはB.バーカンの議論を応用した概念である.再生力集団とは,1つは,利用者が精神活動を高められる環境のなかで,役割遂行によりユニットへの貢献を促進するものである.もう1つは,ユニット文化から派生する他者とのつながりのなかで,利用者に学習を促すような場である.要するに,それは個人があるグループと関わることによって活性化・躍動化することを意味する.たとえば特養を利用した途端,穏やかな生活が送れるようになる高齢者のケースが象徴的である.あるいは利用前には周辺症状の激しかった要介護高齢者が,利用後に次第に落ち着いてくるケースも挙げられる. 初年度である平成21年度は,4月から8月まで,新型特養の5人と従来型特養の6人のケア職員に非構造化されたインタビュー調査を実施した.分析の結果,新型と従来型,いずれのタイプの特養でも現場の模索なしに「再生力集団モデル」の条件が整っているとはいえないことが示唆された.
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