2009 Fiscal Year Annual Research Report
学生相談活動における大学生向けセルフヘルプブック開発のための実証的研究
Project/Area Number |
21730515
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
佐藤 純 University of Tsukuba, 大学院・人間総合科学研究科, 講師 (20327266)
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Keywords | 大学生 / 学生相談 / セルフヘルプ / 援助要請 / 心理教育 / 予防的アプローチ |
Research Abstract |
本研究は,学生相談活動における心理教育的・予防的アプローチの一つとして行われている冊子(セルフヘルプブック)の利用について,その機能や効果を実証的に研究しようとするものである。大学生の被援助志向性に関する先行研究から,自尊感情が低いほど他者に援助を求めないことが明らかにされているが,この現象について視点を変えてみるならば,それは人に頼らないで自分で問題解決していこうとする態度であると捉えなおすことも可能である。本研究では,こうした態度をセルフヘルプ志向性と名づけ,セルフヘルプ志向性の高い学生に対しては,セルフヘルプブックが大学生の心理的適応により効果的であるとの仮説を立て,それを検証することを目的とする。そのために,今年度はセルフヘルプブック志向性を測定する尺度を作るための基礎的資料を得るための調査を行った。大学生を対象に,半年間におけるストレスの有無とその内容(自由記述),被援助志向性に関する尺度,セルフヘルプ志向理由(自由記述)について質問紙調査を実施した。被援助志向性尺度得点を元にクラスタ分析を行ったところ,解釈可能な4つのクラスタが抽出された。クラスタ1は多くの援助資源を利用し自分ひとりだけで解決を図らない群,クラスタ2は全ての援助資源を利用せず自分ひとりで解決しようとする群,クラスタ3は専門家への被援助志向性は低いが他の援助資源は利用しようとする群,クラスタ4は、友人以外の援助は求めず自分ひとりでも解決を図ろうとする群であった。これら特徴の異なる4つのクラスタごとに,セルフヘルプを志向する理由が異なる(自己成長,援助不安,自己決定志向)ことが示された。セルフヘルプ志向理由に関する自由記述をもとに,セルフヘルプ志向尺度が作成された。本尺度により他者への相談が困難な大学生のセルフヘルプ志向性の把握ができるようになり,その志向性に応じた支援が可能となると考えられる。
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