Research Abstract |
本研究は,学生相談活動における心理教育的・予防的アプローチの一つとして行われている冊子(セルフヘルプブック)の利用について,その機能や効果を実証的に研究しようとするものである。読者の問題解決を支援するセルフヘルプブックの利用は,援助要請に対して抵抗があり自分で問題解決したい人に対しても有用であると推察され,実証的に検討していく意義がある。今年度は,既存のセルフヘルプブックのコンテンツを分析し,セルフヘルプブックの構成要素を明らかにすることを試みた。具体的には,セルフヘルプブックを「読者が抱えた問題を読者自らが解決していくことを援助するために,心理学,精神医学または行動科学等の研究者によって,学術的知見に基づいて書かれた本またはテキスト」と定義し,12冊の市販されているセルフヘルプブックを対象に,その章または節を一単位として,それを2名の評価者によりKJ法を用いて分類を行った。その結果,大きく分けて次の6つの構成要素に分類された:「導入」,「理論的説明」,「基本的ワーク」,「症状別ワーク」,「他の治療法」,「付録・資料」。対象となった本すべてにこれらの構成要素が含まれるわけではなく,大きく分けるなら「基本的ワーク」を中心のタイプと,「症状別ワーク」中心のタイプに分けられると考えられる。また,極端に厚い3冊を除いた平均ページ数は220.4ページ,平均単位数は11.8であり,1章あたり約20ページで構成されていることが示された。それらの結果を基に,上記6つの要素から構成されるセルフヘルプブックの原案を作成し,4名の成人被験者により各要素の評価がなされた。その結果,「基本的ワーク」に対して動機づけ,有用性,心理的負担,実施の困難性の評価が高かった。一方,「症状別ワーク」については,個人差が大きく個人の関心により結果が異なる可能性が示唆された。
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