2011 Fiscal Year Annual Research Report
学生相談活動における大学生向けセルフヘルプブック開発のための実証的研究
Project/Area Number |
21730515
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
佐藤 純 筑波大学, 人間系, 講師 (20327266)
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Keywords | 大学生 / 学生相談 / セルフヘルプ / 援助要請 / 心理教育 / 予防的アプローチ |
Research Abstract |
本研究は,学生相談活動における心理教育的・予防的アプローチの一つとして行われている冊子(セルフヘルプブック)の利用について,その機能や効果を実証的に研究しようとするものである。読者の問題解決を支援するセルフヘルプブックの利用は,援助要請に対して抵抗があり自分で問題解決したい人に対しても有用であると推察され,実証的に検討していく意義がある。今年度は,昨年度検討されたセルフヘルプブックを実際に調査対象者に使用してもらい,その効果を検討した。具体的には,大学生を含む10名の成人の調査対象者に2週間程度の期間を定めてセルフヘルプブックを読んで実行してもらい,実際に使用した上でのコンテンツ評価を行ってもらうのと同時に,事前調査(調査内容説明時)および事後調査(およそ2週間後)における尺度得点(セルフヘルプ志向性尺度・自尊感情尺度)の変化を検討した。その結果,調査への参加を途中で棄権した者,質問紙の回答に不備がある者が合わせて4名いた。残る6名を対象として分析を行った結果,セルフヘルプブックの利用前と利用後において,自尊感情得点に有意な差は認められなかった。また,セルフヘルプ志向性尺度における各下位尺度得点の高低によっても,コンテンツ評価及び自尊感情得点において有意な差が認められなかった。しかし,有意ではないながらも,セルフヘルプ志向性尺度の自己成長信念の得点が高いほど,コンテンツ評価における有用性や事後調査における自尊感情得点が高い様子が見られた。今回は残念ながら期待された効果を実証することができなかったが,調査対象者数が増えることによって,効果を示す可能性も残されていると考える。今年度は震災の影響で授業や就職活動が例年と異なっていたこともあり,特に年度の前半における研究の実施や対象者の確保が困難であったが,今後も継続的に検討していく必要があると思われる。
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