Research Abstract |
本研究は,親の自律-他律の動機づけスタイル(Ryan & Deci,2000)のあり方が,子どもとのかかわりや支援を通して,子どもの自律的学習(Zimmerman & Schunk,2001;Schunk & Zimmerman,2008)を促す,といった内在化プロセスについて検証を行うことを目的としている。当該領域の研究において,親のあり方にフォーカスをあてて詳細な検討を試みた研究は多くない。まず,大学生を対象とした遡及的調査によって,両親の自律的動機づけと子どもの学習観,自己効力感,自律的動機づけとの関連について調べた。結果として,とりわけ母親の自律的動機づけが,内在化のプロセスを通じて,子どもの学習観のあり方を規定している可能性が考えられた。次いで,大学生とその親に調査を行い,親の特性として,親自身の自律-他律の動機づけ,方略志向,学習量志向,環境志向からなる学習観について取り上げた。さらに,Grolnick,Ryan,& Deci(1991)のモデルをふまえて,自律性支援,関与,温かさ,学習支援,自己抑制支援といった多様な動機づけ支援の側面がどのように関わっているかについて明らかにした。子どもの自律的学習に関しては,自律-他律の動機づけ,反復方略,意味理解方略,メタ認知的方略の学習方略の利用に着目した。特徴的な傾向としては,動機づけ支援のうち,自律性支援と自己抑制支援がそれぞれ異なる自律的学習の側面と関連している可能性があげられるなど,親の特性や支援のあり方がいかに子どもの自律的学習のあり方と関わっているかについて一定の示唆を得た。
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