2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21730608
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Research Institution | 防衛大学校 |
Principal Investigator |
永岑 光恵 防衛大学校, 人文社会科学群, 准教授 (80392455)
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Keywords | ストレス / 情動 / 記憶 / 唾液中コルチゾール / 概日リズム |
Research Abstract |
本研究は、時間生物学的観点から、内分泌系の概日リズムと情動を伴う出来事記憶の形成過程との関連を明らかにするための基礎的実験研究である。情動を伴う出来事記憶の形成過程において、ストレス反応の一つである視床下部,脳下垂体,副腎皮質系を介して分泌されるコルチゾールが影響を及ぼすことが明らかにされている。従来の研究においては、記憶形成過程における外因性のコルチゾール注入の影響などが検討されてきた。しかし、内因性のコルチゾール分泌、すなわち、「朝高く、夜低い」という概日リズムと情動記憶形成過程との関連については明らかにされていない。当該年度前半においては、本実験に向けての研究環境の整備を行い、後半に本実験を開始した。本研究は施設の倫理審査委員会が承認した後、本人から文書同意を得て行われた。現時点で、目標対象者数の4分の1にあたる、健常な大学生10名に対して実験を終了した。刺激課題は、第2章が情動喚起物語となる全3章から構成されている(Cahill et al., 1995)。刺激実験初日に課題をモニターに呈示し、1週間後、刺激課題の内容に関して不意の記憶検査を行った。また、刺激実験初日には、コルチゾール分泌の概日リズムを評価するために、8時、11時、15時、20時の4ポイントに唾液採取を行った。対象者を唾液中コルチゾール分泌の概日リズムの相違(8時から11時へのコルチゾール値減少度の高低)により2群に分け、記憶量に関して2要因の繰り返しのある分散分析(章(1-3章)×群(コルチゾール値減少度高,低群))を行った。その結果、章と群に有意な交互作用(F(2,12)=5.38,p<.05)が示された。コルチゾール値減少度の低群においてのみ、第2章の情動性記憶量が第1章の中性記憶量よりも高い傾向にあった。以上より、健常者において、概日リズムの相違が情動を伴う出来事記憶の形成過程に異なる影響を及ぼすことが示唆された。
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