2011 Fiscal Year Annual Research Report
学校事故裁判変遷から見る保護者・裁判所の学校観の変化と教員の危機意識に関する研究
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21730647
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Research Institution | Tokyo Jogakkan College |
Principal Investigator |
黒川 雅子 東京女学館大学, 国際教養学部, 准教授 (90339482)
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Keywords | 学校事故 / 教育裁判 / 危機意識 / 学校観 |
Research Abstract |
本研究は、教育裁判で特に法化現象が進行している学校事故の領域について、戦後の学校事故裁判の特徴と教員の危機意識を反映した学校事故対策教員研修プログラムの開発に必要となる基礎的資料を提示することを第一義的目的としている。学校事故裁判の分析について、学校教育の法化現象の進展に呼応して、量的変化の考察に加えて、学校観の変化を捉えるとともに、学校事故対策に関する教員研修に必要とする基礎的資料の作成を模索しようとする点に、本研究の特色が存在する。 研究2年目に当たる2011年度は、特に1970年代以降の学校事故裁判の量的変化について考察を試みた。学校事故に起因する裁判数の動向を見るにあたっては、独立行政法人日本スポーツ振興センターによる災害共済給付状況を合わせて検討することとした。学校事故裁判と災害共済給付状況をリンクさせて捉えることを通じて、学校事故における校種別特徴を把握すること目標とし、分析を行った。 その結果、第一に、災害共済給付の状況からみた校種別特徴としては、事故発生率は、中学校が最も高いが、事故により重度の負傷を負うのは高校生の方が可能性が高い傾向にあった。第二に、学校事故に起因する裁判数については、法化現象の進行が認められ、量的増加傾向が顕著となっている。第三に、裁判となった事案の校種別特徴と、重度の負傷を負う学校事故発生の可能性が特に高い場面を照らすと、小学校においては、休憩時間に特に配慮が必要になるといえ、中学校、高等学校においては、課外活動のうち主に「部活動」における事故発生率が高く、またそれらは裁判という形で問題の解決が図られることになる可能性が高いということが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
学校事故裁判の分析を行うにあたり、量的変化の考察を行うことを研究2年目の目標として研究を進めてきた。この点、量的変化を分析するに当たり、災害共済給付の状況も分析の視点に加え、その結果校種別特徴を明らかにし、研究成果については所属学会で報告することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、教員の学校事故をめぐる危機意識調査を実施する計画である。学校事故に関する校内外研修の有無、及びその参加率、学校事故発生予防のために教員個人が配慮している点、事故発生後の対応ルートの明確化が行われているか等、学校という組織的な危機管理体制ではなく、教員個人の学校事故をめぐる危機意識に関する調査を実施することにおいて、教員の学校事故に対する意識の現状と課題の抽出を行う。研究結果については所属学会で報告し、本研究の報告書を作成することにしたい。
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Research Products
(3 results)