2010 Fiscal Year Annual Research Report
理科教育におけるロジックとレトリックの統合的なスキル育成方法の解明
Project/Area Number |
21730691
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
内ノ倉 真吾 静岡大学, 教育学部, 助教 (70512531)
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Keywords | 理科教育 / アナロジー / アナロジー的推論 / 認知的葛藤 / 教授ストラテジー |
Research Abstract |
平成22年度では、前年度までの文献調査の結果に基づいて、フィールド調査を行った。文献調査では、理科教育論の基底となっている学習論の変遷を整理し、それに伴った言語観の変容を探った。また、理科教育における代表的な教授ストラテジーである認知的葛藤ストラテジーの先行研究の成果と課題を把握した。さらに、言語表現によって、思考が方向付けられている事例として、電気分野のオルタナティブコンセプションの先行研究等を精査した。 フィールド調査では、中学校2年生の電気分野を事例にして、演繹的な思考とアナロジー的な思考を必要とする教授過程をデザインし、実証的な調査を行った。その結果、次のような知見が得られた。(1)生徒の学習前の科学的に適切とはいえない考えを代表するアナロジーと、より科学的なモデルに近いアナロジーという、対照的な複数のアナロジーの導入は、認知的な葛藤を生起・促進し、それを解消するという教授展開において有効であった。(2)背理法的な推論プロセスと関連付けて、生徒の考えを代表するアナロジーを評価すると同時に、そのアナロジーによって、生徒の電流のモデルを評価するというプロセスを通じて、生徒の認知的な葛藤を生起・促進する効果が認められたのであった。(3)生徒の考えを代表するアナロジーの限界が明白になり、認知的な葛藤が高まった場面は、生徒自身による新たなアナロジー生成の時機でもあった。このとき、科学的なモデルに近いアナロジーを導入することによって、先の認知的な葛藤が解消され、生徒の考えを変容・転換させることにつながり、生徒自身がその認知的な変容も実感しうるのであった。(4)構造化されたアナロジーによって、科学的な意味で未分化であった生徒の考えのうちに、関連概念間の区別が意識化されるような、科学的な理解の促進効果があった。
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