2011 Fiscal Year Annual Research Report
聴覚障害学生の主体的な参加を実現させる情報保障のあり方に関する実践的研究
Project/Area Number |
21730714
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
金澤 貴之 群馬大学, 教育学部, 准教授 (50323324)
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Keywords | 聴覚障害学生 / 情報保障 / ICT / PCテイカー / 主体的参加 / 手話 / 合意形成 / インターセプト |
Research Abstract |
聴覚障害学生への支援において,聴覚障害学生が情報の一方的な受け手になってしまっているという問題がある。そこで本研究では,聴覚障害学生が他の学生と対等に主体的な参加ができる環境の構築について実践的検討を行うこととした。最終年度である本年度は,初年度に明らかになったICT活用の可能性と限界,昨年度に実践したiPhone等を活用した遠隔PCテイクの試行的実践やデジタルペンの活用等を踏まえ,以下の実践的検討を行った。 1.手話を日常言語とする聴覚障害学生の場合,通常のPCテイクではインタラクションが困難である。そこでPCテイクを行う学生が仲介者役を担当すべく,手話の実技を含む授業を開設するとともに,障害学生支援室でも手話教室を運営した。 2.聴者学生が音声に手話を併用した場合,音声での合図等による発言権の確保が行われることで,聴覚障害学生の発言権が奪われ,ディスカッションの場での聴覚障害学生の主体的参加の阻害要因となる。その具体的な様相を分析すべく,聾学生が聴学生の中に加わった会話場面と,聾者同士の手話による会話場面との比較によるビデオ分析を進めた。両者の比較により,聴学生による発言権の取得が音声によってなされ,聾学生には可視化されない問題が示唆された。しかしさらなる分析が必要であると考え,この研究は今後の継続課題とする。 3.聴覚障害学生のエンパワーメント促進のためには,障害学生支援室が単なる情報保障の事務的なやりとりをする場ではなく,成人聾者や手話と出会い,多くの刺激に触発される場となる必要がある。そのためには手話通訳技術を有する職員や聾者職員の採用が必要となるが,採用実現のためには学内での合意形成を図っていかなければならない。そこで採用を実現させた大学での事例分析を行い,大学の意思決定プロセスになじむ形での戦略的な合意形成方略の必要性について明らかにした。
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Research Products
(4 results)