2009 Fiscal Year Annual Research Report
流体運動を記述する双曲・放物型方程式系の解の時間漸近解析
Project/Area Number |
21740100
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中村 徹 Kyushu University, 大学院・数理学研究院, 助教 (90432898)
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Keywords | 偏微分方程式論 / 流体力学 / 圧縮性流体 / 境界層解 / 粘性保存則 / エネルギー法 |
Research Abstract |
本研究では流体運動を記述する圧縮性Navier-Stokes方程式などを包括するような双曲・放物型方程式系に対し,半空間領域での定常解の安定性についての統一的理論の構築を主な目的としている.研究代表者らはこれまでに上記方程式系に含まれる単独粘性保存則や圧縮性粘性流体の等エントロピーモデルに対して,その定常解の安定性定理を示した.その際,縮退した定常解への漸近率には一定の上限値$(1+\sqrt{2})/2$があることを確認した.そこで本研究初年度である本年では,さらなる具体例として熱伝導圧縮性粘性流体の理想気体モデルを解析対象とし,1次元半空間での定常解の安定性解析を行った.具体的には定常解の存在性,安定性及び時間漸近率の導出を示した.熱伝導圧縮性粘性流体の理想気体モデルの定常問題は,2本の方程式からなる連立常微分方程式系の境界値問題へと帰着され,他のモデルと比較しても解析は複雑になるが,中心多様体定理等を適用することにより,マッハ数の値に応じた定常解の存在性とその定量的な性質を導き出すことに成功した.続いて定常解の安定性をエネルギー法を用いることにより証明した.マッハ数が1の場合は定常解の縮退性により証明はより困難になるが,定常解の詳細な減衰評価を求めることにより解決した.さらに初期摂動に対し指数的または代数的減衰を仮定することにより,定常解への時間減衰率を導出することに成功した.証明は主に時空間重み付きエネルギー法による.マッハ数が1となる場合は定常解が縮退してしまう為,代数的な漸近率しか求めることが出来ないが,その漸近率の上限値には$(1+\sqrt{2})/2$というこれまでの単独粘性保存則などの研究で得られた上限値と同じ値が現れることを発見した.
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Research Products
(3 results)