Research Abstract |
これまで太陽系外では,主に観測に視線速度法やトランジット法が用いられていることによる限界もあって,太陽系に似た惑星系はあまり見つかっておらず,10AUを超える範囲の系外惑星の分布はよく知られていない.発見されている惑星の多くは中心星のごく近くを公転している.その外側にどのような惑星系が広がっているかを調べることは,太陽系外の惑星との比較を通じて太陽系の成り立ちを理解するための貴重な手段である.本研究では,惑星が軌道不安定を起こして散乱が生じた場合に,中心星の近くと遠方とに,それぞれどのような惑星が作られるかを調べ,計算で得られた短周期の惑星を観測結果と比較したときに分布が一致するモデルを用いて,観測のできない領域に広がっている惑星の分布を推定することを目的としている. 本年度は,発見されている短周期の惑星の進化に対する制約を研究した.それぞれの惑星の質量,半径,公転位置,中心星の質量に対して,働く潮汐力を計算し,軌道の変化する時間スケールを求めた.その結果,中心星と惑星との最接近距離が0.05AU程度であって,かつ離心率が大きい惑星は,惑星系が不安定になった後に散乱され,力学的潮汐力を受けて進化したモデルでその軌道がよく説明できることがわかった.このような惑星は,惑星の激しい散乱過程が終了してから中心星近くに移動しやすい.そして数値計算では,こうして作られた惑星の外側には,10AU程度から50AU程度の間にもうひとつ惑星が存在することが多くなっている.一方で,中心星のごく近くに惑星を持たない惑星系では,外側の惑星は,中心星との再接近距離は30AU程度であっても,彗星のように極めて離心率が大きいものが多くなる.惑星散乱によって,円軌道に近い遠方惑星を形成するためには,散乱後に軌道を円軌道化するような抵抗力が働く環境が必要である.
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