2011 Fiscal Year Annual Research Report
超離散化法による可積分セルオートマトンの解析と非可積分系への応用
Project/Area Number |
21760063
|
Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
礒島 伸 青山学院大学, 理工学部, 助教 (90422394)
|
Keywords | 数理物理 / 可積分系 / セルオートマトン / 超離散化 |
Research Abstract |
符号付き超離散パンルヴェII型(PII)方程式のBi関数型特殊解を構成した。前年度のAi関数型特殊解に関する結果と合わせると、同方程式の特殊関数解系列を本質的にはすべて捉えたと考えられる。また、超離散エアリー方程式および超離散PII方程式の特殊解が、差分エアリー方程式、差分PII方程式の特殊解に対する極限操作で得られることを示し、その副産物として、制限付き分割数に関する無限個の関係式を得た。これらの結果は、超離散系の解の数理構造を明らかにするにあたって重要な具体例となる。特に、差分PII方程式の特殊解は行列式で表され、その極限は通常の超離散化では扱うことができなかったものである。これらの研究成果は雑誌論文として掲載され、学会等(国際会議を含む)でも発表した。上記の研究に引き続き、ベッセル方程式とパンルヴェIII型(PIII)方程式に対しても符号付き超離散類似とその特殊解の構成を進めた。超離散ベッセル方程式の解についてはある程度まとまった結果が得られ、研究集会で共同発表した。超離散PIII方程式の特殊解については方程式のパラメータが簡単な場合の結果を得ており、より一般の場合の研究が進行中である。これは、先のPII方程式に関する成果と合わせて、超離散パンルヴェ方程式の退化構造などを研究する基礎となるものである。 差分方程式の可積分性判定法と深く関連する「特異点閉じ込め(SC)テスト」の超離散類似である、超離散SC(uSC)テストを、SCテストによる扱いが難しい差分方程式の超離散類似に適用して得られた知見をまとめ、雑誌論文として発表した。 非可積分系への超離散化の応用に向けて、ある超離散系に対するカルマンフィルターを構成した。その結果を研究集会でポスター発表し、その先駆性や応用の可能性などが評価されて最優秀ポスター賞を受賞した。これは、ノイズを含む非線形系の超離散近似解析の確立へ向けた基礎研究となっている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「超離散化における負の困難」の解消に向けて提案した「符号付き超離散化」の手法を用いていくつかの可積分系の符号付き超離散類似とその解を構成し、手法の有効性を確認すると共に、超離散系の数理構造を調べる準備が整いつつある。非可積分系については、交通流モデル、超離散カルマンフィルターと、2つの成果を発表している。
|
Strategy for Future Research Activity |
可積分方程式の超離散化については、符号付きパンルヴェIII型方程式の特殊解の構成、超離散戸田方程式の周期解の構成に引き続き取り組む。また、可積分セルオートマトンの数理構造を記述する手掛かりとするべく、行列式の符号付き超離散化を研究する。 非可積分方程式の超離散解析については、ノイズを含む非線形系に対する符号付き超離散近似とカルマンフィルターに対応する推定量計算を用いた解析を考えている。そのためにはまず通常の超離散系に対するカルマンフィルター理論を確立する必要があり、本研究課題の研究期間内では実際の応用まで到達することは困難と考えられる。本研究期間では、理論確立に向けて、既に得た初等的な結果を拡張した具体例を提出することを目標とする、
|
Research Products
(9 results)