2011 Fiscal Year Annual Research Report
幕藩体制期の政治変動にともなう武家地の空間的変容に関する研究
Project/Area Number |
21760503
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
岩本 馨 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 助教 (00432419)
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Keywords | 都市史 / 空間史 / 武家地 / 政治史 / 城下町 |
Research Abstract |
本年度は3年間の研究期間の最終年度として、1年目・2年目から行っている日記類の蒐集、「屋敷渡預絵図証文」「屋敷書抜」のデータベース化、江戸図の分析などの成果をふまえ、江戸における武家屋敷地移動の全体的把握について、成果のまとめを行った。具体的には吉川弘文館歴史文化ライブラリーの一冊として『江戸の政権交代と武家屋敷』を刊行した。同書は大きくプロローグ、本論5章、エピローグからなる。最初の章は江戸初期を対象とし、「慶長江戸絵図」「武州豊嶋郡江戸庄図」などに描かれる武家地の悉皆調査を手がかりに武家地の空間構造を分析した。第二の章は綱吉政権成立期を対象とし、館林藩士の幕臣化、越後騒動と本所撤退との関係などを指摘した。第三の章は家宣政権成立期を対象とし、甲府藩士の幕臣化と旧甲府藩邸空間の解体と再編の過程について分析を行った。第四の章は吉宗政権成立期を対象とし、和歌山藩士の幕臣化にともなう空間の変容を、江戸のみならず和歌山城下町の武家地も視野に入れながら分析を行った。第五の章では少し視点を変えて、18世紀以降江戸幕臣の移転先となった甲府に着目し、勤番士・勝手小普請たちの移動の実態を分析した。最後にエピローグでは幕末の武家屋敷の動向を概観しつつ、武家地における「拝領」システムの終焉について論じた。以上のように同書では近世江戸武家地の空間的変容について、通史的な見通しを示すことができたと考えている。
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