2009 Fiscal Year Annual Research Report
ヘテロ双頭キネシンを用いた二頭間協調性の一分子観察
Project/Area Number |
21770160
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
有賀 隆行 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 助教 (30452262)
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Keywords | 分子モーター / 一分子計測(SMD) / 生物物理 / 蛍光共鳴エネルギー移動 / 細胞内輸送 |
Research Abstract |
生体分子モーターは、如何にして化学エネルギーを運動エネルギーへと変換するのだろうか?微小管上を走るキネシン分子については、二つの加水分解部位を交互に動かしながら、歩行するように微小管上を連続的に運動することが明らかになったが、一方で、Eg5と呼ばれる紡錘体形成にかかわるモーターは、連続的な運動に加えて、拡散運動、非連続的な運動と、さまざまな運動モードを持つことが明らかになりつつある。本研究では、そのような運動モードの特性がどこから現れるのかを明らかにすることを目的に1分子計測による運動観察と、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)計測による分子内部での構造遷移の検出を行った。まず、Eg5のATP加水分解領域である「頭部」と、四量体形成部位である「茎部」をつなぐ「ネックリンカー」に着目し、ネックリンカーと茎部の間にグリシンを挿入したネックリンカー伸長変異体の運動観察を行った。その結果、ネックリンカー伸長変異体は、野生型に比べて連続歩行能が向上することを見出した。次に、1分子FRET観察を用いて、Eg5のネックリンカーの構造状態を調べた結果、従来型のキネシンではヌクレオチドフリー状態で非結合状態を取ることが知られていたが、Eg5では結合状態が支配的であり、従来型キネシンとEg5でATP加水分解過程での構造状態が異なることを明らかにした。これらの結果から、多分子で協調して染色体分配を担うEg5にとって、一分子で細胞内輸送を行う従来型キネシンのような高度な連続歩行能は必要ないため、両者はネックリンカーの構造変化の違いによってそれぞれの役割に最適化されている可能性が示唆された。今後はそれら二つの役割の異なる頭部によるヘテロダイマーを作成し、その運動特性から頭部間での協調作用を調べていく予定である。
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