2010 Fiscal Year Annual Research Report
細胞状況依存的シグナル伝達変換機構に着目した細胞競合機構の解析
Project/Area Number |
21770233
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
大澤 志津江 神戸大学, 医学研究科, グローバルCOE研究員 (80515065)
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Keywords | 細胞競合 / 細胞間コミュニケーション / 癌抑制 |
Research Abstract |
多細胞生物の上皮組織に癌原性の異常細胞が生じると、組織はそれを積極的に認識・排除することによりその恒常性を保つと考えられている。しかしながら、このような上皮の内在性癌抑制システムの分子機構はほとんど不明であった。当研究室ではこれまでに、(1)ショウジョウバエ成虫原基の上皮組織に生じた極性崩壌細胞がc-Jun-N-teminal kinase (JNK)依存的な細胞死経路により排除されること、およびこの細胞排除は(2)正常細胞-異常細胞間で起こる細胞競合に依存し、(3)極性崩壊細胞がその周囲を正常細胞に取り囲まれたときのみ起こることを見いだした。そこで本研究では、このモデル系を利用し、正常細胞側から極性崩壊細胞側へと伝達される細胞間コミュニケーション機構を解析した。まず、極性崩壊細胞を誘導した上皮組織について、JNKの活性化パターンを詳細に観察した。その結果、JNKシグナルは排除される極性崩壊細胞においてのみならず、その周囲を取り囲む正常細胞においても活性化していることが明らかになった。そこで、この正常細胞におけるJNKシグナルの役割を遺伝学的手法および最近宮脇敦史博士(理研脳センター)・杉村薫博士(理研脳センター)との共同研究により確立したショウジョウバエ成虫原基に対するライブイメージング技術を導入することにより解析した。その結果、正常な上皮細胞は、極性崩壊細胞の出現に応答してJNKシグナルを活性化させ、これが細胞骨格系シグナルPVR (PDGF/VEGF receptor)-ELMO/Mbcを介して貪食能を亢進し、これにより極性崩壊細胞にエントーシス様細胞死を引き起こすことが明らかになった。
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Research Products
(13 results)