2009 Fiscal Year Annual Research Report
有毒渦鞭毛藻ディノフィシスが捕食する繊毛虫およびその餌料生物の多様性と分子系統
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21780191
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Research Institution | Fisheries Research Agency |
Principal Investigator |
西谷 豪 Fisheries Research Agency, 瀬戸内海区水産研究所 赤潮環境部, 研究等支援職員 (70450781)
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Keywords | 下痢性貝毒 / Dinophysis / Myrionecta rubra / クリプト藻 / 分子生態 |
Research Abstract |
1、成果の具体的内容:「研究実施計画」に記載していたサンプリング予定の計7海域(北海道能取湖,北海道噴火湾,青森県陸奥湾,兵庫県播磨灘,広島県広島湾,大分県猪串湾,熊本県八代海)において全て順調にサンプリングを行い,繊毛虫Myrionecta rubraを134細胞,および渦鞭毛藻Dinophysis属を68細胞単離した。これら全ての細胞からDNAを抽出し,配列を調べた結果,M.rubra細胞から検出された配列のほとんどがクリプト藻Teleaulax amphioxeiaのものであり,この結果は現場海水中のM.rubraが数あるクリプト藻種の中でも特にT.amphioxeiaを餌料として選択的あるいは優先的に摂食していることを示唆している。またDinophysis属細胞から得た配列もまたT.amphioxeiaのものがほとんどであり,Dinophysis属の葉緑体がほぼ単一のクリプト藻種に由来することを明らかにした。しかし例外として,北海道噴火湾から単離したDinophysis属からは,T.amphioxeiaとは異なる未知のクリプト藻配列が検出された。海域によっては(特に北方海域では),複数のクリプト藻種がM.rubraの餌料およびDinophysis属の葉緑体起源になっていることも考えられる。 2、意義:本研究の成果により,現場におけるDinophysis属,その餌料である繊毛虫M.rubra,さらにその餌料であるクリプト藻T.ampioxeiaを含む複雑な生態の一端が初めて明らかにされた。これらはDinophysis属の発生予測に貢献する成果であり,下痢性貝毒の発生予測に繋がる成果である。 3、重要性:本研究の成果は,日本沿岸域で広く行われている二枚貝類の養殖産業にとって,その被害の軽減に貢献するものであり,重要性は非常に高いと判断される。
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Research Products
(2 results)