2010 Fiscal Year Annual Research Report
有毒渦鞭毛藻ディノフィシスが捕食する繊毛虫およびその餌料生物の多様性と分子系統
Project/Area Number |
21780191
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
西谷 豪 東北大学, 大学院・農学研究科, 助教 (70450781)
|
Keywords | 下痢性貝毒 / Dinophysis / Myrionecta rubra / クリプト藻 / 分子生態 |
Research Abstract |
【成果の具体的内容】 研究期間3年間の2年目にあたる平成22年度の成果を記載する。交付申請書には、2年目以降、海外からもサンプルを入手して解析すると記載していたが困難であったため、国内から採取したDinophysis mitra細胞の解析に焦点を当てた。本藻の葉緑体DNAを解析した結果、ハプト藻・ディクティオカ藻・ペラゴ藻・珪藻・プラシノ藻など多分類群にわたる計123種類の配列が検出された(論文投稿中)。また、D.mitraの餌料であると推察した葉緑体を保持する繊毛虫の1種であるSpirotontonia grandisの葉緑体DNAも同様に解析した。その結果、上記で得たD.mitraが持つ葉緑体と類似した構成であることが明らかとなった(論文執筆中)。興味深いことに、繊毛虫の細胞内に残されていた葉緑体は、プラシノ藻などの緑藻起源の微細藻類よりもハプト藻などの紅藻を起源とする微細藻類が大半を占めていた。今後はD.mitraに上記のような繊毛虫を餌料として培養実験を行い、D.mitraの餌料生物を特定する必要がある。 【意義と重要性】 有毒渦鞭毛藻の1種であるD.mitraの餌料生物は未だ明らかでないが、本成果はS.grandisなどの葉緑体を保持する繊毛虫が有力な餌料候補であることを示している。また今年度の成果では、繊毛虫などの原生生物が実際の現場で摂食している微細藻類種の多様性を解明することに成功した。この成果は繊毛虫の培養実現に向けて貢献するものであり、海洋生態系の理解を深めるためにも重要な知見である。
|