2009 Fiscal Year Annual Research Report
発達障害における衝動性の発現機構解明と薬物治療-脳内報酬系の破綻による観点から
Project/Area Number |
21790515
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山口 拓 Hokkaido University, 大学院・医学研究科, 助教 (80325563)
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Keywords | 発達障害 / 注意欠如多動性障害 / 衝動性 / SHRSP / Ezo / 網羅的一塩基遺伝子多型解析 / premature response / セロトニン・ノルアドレナリン再取込阻害薬 / 薬物治療 |
Research Abstract |
本年度の検討では、発達障害における衝動的行動の発現機構の解明を目的として、発達障害モデルラットの衝動的行動の発現に関わる分子の探索および衝動性の新規評価系を用いた行動薬理学的解析を実施した。発達障害のモデルラットとして注意欠如多動性障害(ADHD)のモデル動物である幼若SHRSP/Ezoを中心に実験を行った。高架式十字迷路試験による行動解析において、幼若SHRSP/Ezoに認められる衝動的行動は、SHRSP関連系統亜種であるSHRSP/Izm、SHRSP/Ngsk、WKY/Ezoでは観察されず、SHRSP/Ezoに特異的な行動学的表現型であることが明らかとなった。 この結果をもとに、網羅的一塩基遺伝子多型(SNP)解析の結果を利用してSHRSP/IzmおよびSHRSP/Ngskとは異なるSHRSP/Ezoに特異的な多型領域を検索したところ、BN系統を基準とした21,032遺伝子のSNPの中から266遺伝子が検出され、これらは第7、9およびX染色体上にSNPの集積が認められた。次年度ではこれらの遺伝子群の中から中枢神経系に関連する候補分子をさらに絞り込み、それらの関与を検討する予定である。さらに衝動性の新規評価系である3-選択反応時間課題を用いて、正常ラットが示す衝動的行動についてpremature responseを指標に行動薬理学的に検討した。ラットが示すpremature responseは、選択的セロトニン(5-HT)再取り込み阻害薬であるフルボキサミンでは効果が無く、ADHD治療薬(選択的ノルアドレナリン再取込阻害薬)であるアトモキセチンおよび5-HT・ノルアドレナリン再取込阻害薬(SNRI)であるミルナシプランによって抑制された。これらのことから、衝動的行動の改善薬として新たにSNRIの有用性が示された。
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