| Research Abstract |
慢性化した心房細動(AF)に対するカテーテルアブレーション治療において,不整脈基質を反映すると考えられている複雑に分裂した心房電位波形すなわちcomplex fractionated atrial electrogram(CFAE)に対するマッピングが試みられている.本研究では,CEAEの成因を明らかにし, CFAEを標的としたアブレーションの有効性などについてin silicoすなわちコンピュータシミュレーションで検討した.平成21年度には,まずヒト心房筋のCourtemanche活動電位数学モデルを用いて2次元ヒト心房筋モデルを開発した.そして,多層構造を有する心房筋における構造的リモデリングが,持続性の高いAFを生み出し,心房内局所でCFAEが記録されるようになることを見出した.この研究成果は日本循環器学会で発表し,関連の研究成果については雑誌論文の総説や学会シンポジウムなどで発表した.次に,心房筋の構造的リモデリングにおいて増生する線維芽細胞の数学モデルを開発し,これを2次元ヒト心房筋モデルと組み合わせると,持続性の高いAFが再現され,CFAEが記録されやすくなることを見出した.この研究成果は,すでに平成22年度の米国Heart Rhythm学会や日本不整脈学会のシンポジウムに採択され,発表予定となっている.また,上記の研究成果を合わせて現在,論文を執筆中である.また,平成22年度以降へ向け,CFAE標的アブレーションの有効性についてはin silico実験を重ねているところであり,ヒト心房筋モデルの3次元化に必要な技術開発も並行して行っている。本研究成果は,AF慢性化とCFAE標的アブレーションの理論的根拠を明らかにするとともに,効率的でevidence-basedな新しいAF治療法の提案に繋がることが期待される.
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