Research Abstract |
慢性化した心房細動(AF)に対するカテーテルアブレーション治療において,不整脈基質を反映すると考えられている複雑に分裂した心房電位波形すなわちcomplex fractionated atrialel ectrogram (CFAE)に対するマッピングが試みられている.本研究では,CFAEの成因を明らかにし,CFAEを標的としたアブレーションの有効性などについてin silicoすなわちコンピュータシミュレーションで検討するものである.平成22年度までに開発した2次元ヒト心房筋数学モデル(心房筋の構造的リモデリングにおいて増生する線維芽細胞の数学モデルを組み込んだもの)を用いて,平成22~23年度にかけて,線維芽細胞の増生による心房筋細胞への電気緊張電位の影響が,AFにおける興奮波の分裂を促進し,慢性化に関与するとともに,心房内におけるCFAEの成因となること,また,そのようなCFAEを標的にした心筋焼灼がAFを停止するメカニズムを明らかにした.さらに,平成23年度には,様々な追加実験を行い,本研究に基づいて提唱した「線維芽細胞CFAE仮説」が臨床データと矛盾しないことを示した.これらの研究成果は,下記の研究発表リストにもあるとおり,国内外の学会・シンポジウムで講演したほか,今年度に執筆した論文は,学術誌Circulation Research (Impact Factor=9.504)に掲載された.最終年度となる平成24年度へ向けては,最適なCFAE標的アブレーションの戦略についてin silico実験を重ねているところであり,引き続き,ヒト心房筋モデルの開発・改良も並行して行う予定である.本研究成果は,AF慢性化とCFAE標的アブレーションの理論的根拠を明らかにするとともに,臨床における慢性心房細動の治療に大きく寄与するものと期待される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主要テーマである慢性心房細動とその治療へ向けたCFAEメカニズムの解明については,国内外の学会やシンポジウムなどで講演し,学術論文としての発表も含め,一通りの成果を挙げることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の当初は両心房3次元モデルをできるだけ早期に構築することを考えていたが,臨床におけるニーズを受けて,研究の主体をCFAEメカニズムの解明および,CFAE標的アブレーションによる慢性心房細動の治療に一時シフトしたため,両心房3次元モデルの開発については若干遅れている.次年度は,その開発も進めたい.
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