2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21790731
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
向井 靖 九州大学, 病院, 助教 (40444856)
|
Keywords | 心腎連関 / 動脈硬化症 / 腎血行再建術 / 画像診断 |
Research Abstract |
本研究は腎動脈の動脈硬化症が全身動脈硬化の進展に重要な関与をしているという概念のもと、腎動脈の局所的血行再建が全身病としての動脈硬化性疾患に対する総合的治療戦略の一つとなりうるか否かを検証することを目的とする。腎動脈狭窄を有する患者の末梢血サンプルを用いて各種バイオマーカーに関してELISA法により検討を行ったところ、腎動脈狭窄を有する患者では冠動脈狭窄を有するが腎動脈狭窄を有しない患者に比べてMCP-1およびインターロイキン(IL)1-βの発現が有意に亢進していた。MCP-1およびIL-1βは動脈硬化の進展メカニズムに関与する重要なサイトカイン・ケモカインであり、腎動脈狭窄に関連した全身動脈硬化の進展との関連が示唆された。MRIにて動脈硬化症を有する患者の大動脈壁を評価したところ、腎動脈狭窄を有する患者においては、冠動脈狭窄を有しているが腎動脈狭窄を伴わない患者に比して、大動脈壁の動脈硬化病変がより広範であった。動脈硬化病変では炎症性変化がその病態において重要であるため、FDG-PETで大血管の動脈硬化病変を評価したところ、ごく軽度の集積を認める症例があったが、形態学的動脈硬化とFDGの集積は有意な相関がなく、腎動脈狭窄症例で顕著な傾向も認めなかった。FDG集積が病変の活動性あるいは不安定性を意味する可能性があり、この点も検証の対象としている。腎動脈狭窄に対して血管形成術を行った症例では、半年後にMRI所見の追跡を行ったが、この観察期間では動脈硬化病変の定量において有意な変化を認めなかった。さらに長期の観察を行うことで、継時変化の観察を予定している。以上、腎動脈硬化症が全身動脈硬化と関連することを示唆するいくつかの知見が得られたが、さらにその臨床的意義を検証してゆく所存である。
|