2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21820080
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Research Institution | 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館 |
Principal Investigator |
安藤 香織 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸研究部列品管理課登録室, アソシエイトフェロー (20555031)
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Keywords | 美術史 / 狩野派 / 木挽町 / 晴川院養信 / 模本 / 模写 / 法隆寺 / 東京国立博物館 |
Research Abstract |
江戸時代後期の幕府御用絵師・狩野晴川院養信は、宝物の模写活動に積極的に取り組んだ人物である。 これまでの研究で、養信が制作した古画・古絵巻の模本に関しては明らかにされているが、絵画以外の古器物等に関しては未だ全容が知られておらず、研究推進が望まれる課題である。東京国立博物館は養信筆のものも含む木挽町狩野家伝来模本類を所蔵しており、そのうち養信と弟子たちによる「高野山学侶宝藏古器及楽装束図」については調査報告書が刊行されているため、本研究では、これと同程度に比較的規模が大きい作例として「法隆寺什物図」を取り上げ、その基礎的な調査研究を行った。 昨年度、予定していた「法隆寺什物図」の調査とデジタル撮影を終えるとともに、周辺作品を調査し検討する必要性を感じたため、本年度は方針をやや修正し、東京国立博物館が所蔵する木挽町狩野伝来模本類のうち本研究に関わる作品を別に選定し、「高野山学侶宝蔵古器及楽装束図」をはじめとする37点をデジタル撮影した。また、養信自筆の「公用日記」について、法隆寺什物の模写に関する記事を探し、該当部分を翻刻した。昨年整備した「模写宝物一覧表」と「墨書翻刻」については点検の上で手直しをし、論文に付して発表するために適した状態にした。以上の成果は、模写方法や模写者に関する考察とともに調査報告としてまとめ、2011年4月発行の『MUSEUM』631号(東京国立博物館)に発表した。 本研究はより広い視野を持つ、養信の宝物模本制作に関する研究を推進するための第一歩であり、今後もこの成果を生かしつつ、引き続きこれらの研究に取り組んでいきたい。
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