2010 Fiscal Year Annual Research Report
失業者の心理の理解に基づいた心理的援助に関する研究
Project/Area Number |
21830032
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 美保 東京大学, 大学院・教育学研究科, 准教授 (10549281)
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Keywords | 失業 / 心理的援助 / スティグマ / 尺度 / 国際比較 |
Research Abstract |
本研究では、失業者の心理的困難の一つの要因として、失業者へのスティグマ意識に注目して研究を行ってきた。昨年作成した失業者へのスティグマ尺度を用い、国別、就労状態別など様々な属性によるスティグマ意識の違いを検討した。今年度は昨年度の日本の就労者、大学生に加え、中国の学生、カナダの学生、韓国の就労者への調査を行った。さらに、昨年度実施が困難であった日本の失業者への調査も実現した。それら一連の調査を実施するに際して、関連要因と想定されたコミュニティ感覚、集団主義、キャリア意識について量的調査を行い、スティグマ意識を軽減するための要因分析を行った。また、カナダでは調査と失業者支援の調査を行った。 上記の複数の調査結果から、以下のような知見が得られた。 1.日本と中国、韓国のデータを用いて、スティグマ意識の関連要因となりうる集団意識やコミュニティ感覚の検討を行った結果、コミュニティ感覚はメンタルヘルスにポジティブに作用する可能性が示唆された。 2.日本のデータを元に,失業者との関係性や距離によって失業者に対するスティグマ意識がどのように違うかを分析したところ、失業者との関係性が遠く接触体験が乏しいほどスティグマ意識が高いことが明らかとなった。 3.スティグマ意識についての国際比較を行ったところ、日本、中国、カナダに有意差は認められなかったがスティグマ意識はキャリア観によって異なることが示唆された。 4.失業者のメンタルヘルスとコミュニティ感覚との関係について検討したところ、失業者は就労者よりコミュニティ感覚が乏しく、抑うつ傾向が高いことが示された。また、失業者が罪悪感を持つこと、40代以上は抑うつ的になりやすい可能性が示唆された。 以上より、失業者のメンタルヘルスの要因としての失業者へのスティグマ意識の実態と関連要因が明らかとなった。今後それをどう援助に生かすかを検討する必要がある。
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