2011 Fiscal Year Annual Research Report
生徒の生活満足度(幸福感)に関する国際比較教育調査-先進国・途上国の事例から-
Project/Area Number |
21830074
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
櫻井 里穂 広島大学, 教育開発国際協力研究センター, 准教授 (50509354)
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Keywords | 自尊心 / 中学生 / 先進国・途上国 / 働く子ども / 幸福感 / 学校 / 家庭 / 生活満足度 |
Research Abstract |
本研究は、生徒の満足感(「家庭」「友達」「学校」「コミュニティ」「自分自身」)に文化差が見られるかどうか、また(途上国において)働きながら学校に通う子どもたちと学校だけに通う子どもたちの自尊心などに差があるかどうかを検証することを主な目的としている。今後、引き続き10力国ほどで学校調査をおこなうことを前提としているが、平成23年度は7月にケニア、9月にブータン、そして6月、9月、2月には日本国内で学校調査(複数校)を遂行した。 調査結果を簡単に記述すると、ケニア、ブータン、日本では、中学2年生(ケニアの場合、8年生は小学生に当たる)が自分の自尊心を高めるには、「友達」が大切であることが分かり、これはどの国にも共通して言えることであった。中学生の学齢期の子どもたちにとって、学校では、友達がとても大事な要素であることが分かった。 さらに、児童労働の観点からは、ブータンとケニアで子どもの労働の有無(働きながら学校に通っているか、学校に通っているかどうか)により自尊心に違いがあるかを見たところ、ブータンにおいては、働くことで子どもたちは自尊心を高め、かつ「学校」にも良い影響があることが分かった。これは、2008年に同国で行った調査とほぼ同じ結果となった。 一方で、ケニアでも「働くことで家計に貢献している」という意識を持つことは、学校に関する項目に対してプラスの影響があったものの、実際の労働時間(一週間に何時間働くか)は、学校に対してマイナスの影響が見られた。ブータンではそのような影響は見られず、違いはおそらく子どもたちの働く環境(ブータンでは子どもたちはほぼ全員親の保護下)が一因と考えられる。 本研究は、昨今注目されている「幸福感」や、また、グローバリゼーションにより複雑化している児童労働の研究にも一石を投じたものであり、意味があると考えられる。
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