2010 Fiscal Year Annual Research Report
雇用の内的柔軟性に関するオランダ労働契約法制の研究
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21830100
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Research Institution | Surugadai University |
Principal Investigator |
石田 信平 駿河台大学, 法学部, 准教授 (20506513)
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Keywords | 労働契約法 / 労働条件変更法理 / 労働時間変更請求 / オランダ法 / 制度理論 |
Research Abstract |
平成22年度は、前年度に検討を加えたTaxi Hofman事件(HR 26 juni 1998,JARi998,199)の検討を土台として、オランダ労働契約法制における労働条件の一方的変更法理に関する理論的考察を行った。同事件は、労働契約に関する一般条項を定めるオランダ民法611条(使用者と労働者は、それぞれ良き使用者、良き労働者として行動すべき義務を負っている)に基づいて、使用者の労働条件の一方的変更の申込みについて、労働者には合理的な理由がない限りこれを積極的に受諾すべき義務があることを説示したものである。 オランダ労働契約法では、上記Taxi Hofman事件を契機として、労働契約に関する理論的検討が近時積極的に行われている。一方では、共同体としての労働関係を尊重して労働契約の役割を単なる労働関係の地位設定に縮減し、労働関係の柔軟化を志向する「制度理論」(institutionele benadering)と、労働関係を主としてその開始において締結された契約によって明確にされるべきもとのとして理解する「契約理論」(contractuele benadering)が対立していた(F.Dorssemont,'interne flexibilisering,een variatie op het thema van de institutionele leer',SMA 2005/3)が、上記Taxi Hofman事件以降、「制度理論」と「契約理論」の新たな関係が模索され、以上の見方を統合する見解も提起されていた。平成22年度は、こうした見方の理論的含意について検討するとともに、とくに、労働者側から行う労働時間変更請求に関するオランダ法の動向を概観した。
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