Research Abstract |
薬理ゲノム研究における諸問題を統計学的視点から検討することが本研究の主な目的である.その目的を達成するために,本年度は以下の二つの研究課題に取り組んだ.1.薬物動態(PK)と一塩基多型(SNPs)との関連解析,2.薬効強度及び有害反応とSNPsとの関連解析.まず,第1課題については,ゲノム網羅的アプローチにおいてPKパラメータ(薬物血中濃度-時間曲線下面積,最高血中濃度など)と関連する遺伝子を見つけるために,遺伝子型反応パターン(優性,劣性,相加的モデル)を考慮して薬物動態関連SNPsを検出するための統計学的スクリーニング法を提案した.計算機シミュレーションにより提案法の性能評価した結果,提案法は既存法よりも効率良く薬物動態関連SNPsが検出できることが示唆された.実験家に提案法を幅広く利用してもらうため,フリーソフトウェアとして公開している. 次に,第2課題については,抗がん剤のゲノム網羅的研究において安全性及び有効性を予測するバイオマーカを同定するために,これまでに用いられていた統計解析法がどの程度の精度でバイオマーカを同定して,どの方法を適用すればより多くのバイオマーカが同定できるか統計学的側面から検討を行った.標本変動による判定ミスを少なくすることを目標に,基準とする統計量と判定限界値の多くの組合せについて,数理統計的考察と計算機シミュレーションを通じた検討の結果,Holm法,FDR法,オッズ比の信頼下限値を用いる方法を場合と目的により使い分ける,あるいは併用し組合せることが妥当であることが示唆された.さらに,ゲノム網羅的研究の実データに適用することにより,抗がん剤の抗腫瘍効果及び生存期間に有意に相関する新規のSNPsを同定した.これらの研究成果は,米国臨床腫瘍学会で発表し,現在,英文誌に論文として投稿している.
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