Research Abstract |
ゲノム網羅的薬理ゲノム研究における諸問題を統計学的視点から検討することが本研究の主な目的である.その目的を達成するために,本年度は以下の三つの研究課題に取り組んだ.1.薬物動態パラメータと遺伝子多型(SNP)との関連を探索する修正最大対比法の改良,2.薬効強度とSNPとの関連解析,3.SNPと薬物動態,臨床情報から薬効強度を予測するための数理モデル構築. まず,第1課題については,ゲノム網羅的アプローチにおいて薬物動態パラメータと関連するSNPを見つけるために,遺伝子型反応パターン(優性,劣性,相加モデル)を考慮して薬物動態関連SNPを検出するために開発した修正最大対比法を改良した.その結果,数値計算の速度及び精度が飛躍的に向上し,10-100万SNPの中から薬物動態関連SNPを迅速かつ精確にスクリーニングできるようになった. 次に,第2課題については,非小細胞肺癌のゲノム網羅的研究において,生命予後に関連するバイオマーカを同定するために,Cox比例ハザードモデルによりSNPの影響を評価した.その結果,3つのSNPにおいて有意に予後不良の傾向が認められた.本研究で同定された3SNPは進行非小細胞肺癌における新しい生物学的予後因子の可能性が示唆された。 最後に,第3課題については,血中濃度推移から薬剤の効果を個体毎に定量的に評価するために,個人のパラメータを推定することよりも母集団におけるパラメータの分布に興味があるので個体を変量効果とし,薬効などの推定に興味あるパラメータを固定効果とした非線形混合効果モデルを適用した.その結果,提案したモデルにSNPを固定効果として含めることでSNPの影響も定量的に評価できることができ,通常の体内動態モデルよりも当てはまりがよいことが分かった.
|