2010 Fiscal Year Annual Research Report
虚血性内耳障害における内・外有毛細胞障害と低体温による障害抑制効果に関する研究
Project/Area Number |
21890173
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
白馬 伸洋 愛媛大学, 医学部附属病院, 講師 (70304623)
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Keywords | 突発性難聴 / 内耳虚血障害 / スナネズミ / 低体温治療 / 有毛細胞 / ABR / グルタミン酸 / 神経毒性 |
Research Abstract |
高齢化社会に伴い、難聴に対する社会的関心が高まっているが、今なお感音難聴に対する確実な治療法は開発されておらず、現存する治療手段にも限界があるのが現状である。これまでの報告によると感音難聴、特に突発性難聴には背景に内耳虚血が存在すると推察されている。 一方、脳虚血に関する基礎的研究では、虚血後のわずか数℃の体温低下が虚血・再還流による脳神経細胞障害に対して保護効果を持つことが明らかになっている。スナネズミを用いた虚血実験では虚血再還流5時間までに31~32℃の低体温処置を開始することで、著明な神経細胞死の防御効果が得られることが示されている。臨床の現場においても、脳腫瘍や脳動脈瘤の手術では虚血による神経細胞を防ぐために低体温麻酔が導入され、その有効性が報告されている。しかしながら、耳科学の分野では虚血障害に対する低体温の影響に関する研究は数少ない。我々の内耳虚血障害研究グループはこれまで、スナネズミの一過性内耳虚血モデルを用いて、虚血障害が生じる前から低体温を負荷した場合には蝸牛有毛細胞の聴力閾値の上昇が有意に抑制され、さらにその機序のひとつとして低体温により内有毛細胞蝸牛神経系シナプスにおけるグルタミン酸神経毒性が抑制されることを報告している。 今回、虚血障害後に行う低体温によって、聴力の閾値上昇を抑制されることや、さらに低体温により、虚血に生じる内・外有毛細胞における脱落変性が抑制されることが明らかとなった。またその効果は、虚血後早期に導入し、また低体温の時間が長い方がより顕著であった。このことから、突発性難聴の新しい治療として、発症早期に低体温治療を行う有用性が示唆された。
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