2021 Fiscal Year Annual Research Report
日韓両語の「不完全な文」に関する総合的研究:情報と言語化の関係の解明にむけて
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21H00522
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
生越 直樹 東京大学, 大学院総合文化研究科, 名誉教授 (90152454)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
尹 盛熙 関西学院大学, 国際学部, 教授 (70454717)
金 智賢 宮崎大学, 多言語多文化教育研究センター, 准教授 (40612388)
新井 保裕 文京学院大学, 外国語学部, 准教授 (10718422)
河崎 啓剛 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (80827436)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 対照研究 / 韓国語 / 省略 / 言語構造的特徴 / 歴史的観点 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,各分担者が担当するテーマに沿った分析作業と,データ収集作業を行った。また,得られた知見を学会研究発表および論文にまとめた。 1.テーマごとの分析 ドラマの台本,小説などから名詞止め文を収集し,データ化に務めた [生越]。不完全な述語の関連現象やその談話機能,理論的意義などに関して調査し,3件の学会発表を行った [尹]。日韓両言語の名詞的表現の様相を把握するためのデータ収集・分析を行った。その成果を国内・国際学会で研究発表,および論文にまとめた[金]。現地調査の代わりにコーパスを用いて,日韓「不完全な文」のメディア間の異同について考察した。その成果を論文投稿し,さらに新たな論文を作成中である[新井]。韓国語の歴史的研究の基礎となる中世韓国語の文法を「不完全な文」という新しい観点から概観し,得られた知見を2編の論文として作成中である [河崎]。 2.データの収集 各自が分担して,Netflixドラマやアニメの吹替の台詞[尹],ドラマ台本や小説での台詞[生越],現代語コーパス一般[金],SNSやWebを扱ったコーパス[新井],歴史コーパス等[河崎]から,「不完全な文」のデータを収集した。 3.研究会開催および学会での成果発表 分担者による研究会を4回開催し,得られた成果について発表,および意見交換を行った。同時に,各自のテーマの進捗状況を報告し,分析方法やデータ収集について情報交換を行った。さらに,得られた研究成果については日本や韓国等の関連学会で研究発表を行ったほか,学会誌等に論文を投稿,あるいは投稿準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.テーマごとの分析 名詞止め文については,韓国語での名詞止め文の使用が限定されているため,データの収集を述語なし文や倒置文に広げ,述語で終わらない文の特徴について分析を進めた[生越]。不完全な述語の関連現象やその談話機能,理論的意義などに関する調査結果については国際学会で発表を行い,さらに次年度の分析に向けてNetflixドラマやアニメの吹替/字幕などから不完全な述語の日韓データを収集した[尹]。日韓両言語の名詞的表現の様相については,拡張型コピュラ文,属格名詞句に関する成果を学会で研究発表し,名詞止め文の対照分析に関する論文を作成した [金]。「不完全な文」のメディア間の異同については,韓国語のコピュラ名詞化語尾終結の分析,日本語敬語などに現れる人称性の再考察を日韓対照研究の観点から行い,その成果を論文にまとめた[新井]。歴史的観点からの分析では,「不完全な文」という観点から中世韓国語の文法を見ることにより,当初の想像以上に重要な知見がいくつか得られたため調査・研究を進めた結果,その成果を論文にまとめる目処がついた[河崎]。 2.データの収集 新型コロナの影響で韓国での現地調査ができなかったため,一部のデータ収集が遅れているが,書籍や映像,コーパスを使ってのデータ収集は順調に進んでおり,そのデータを使った研究発表や論文作成も進んでいる。 3.研究会開催および学会での成果発表 予定通り,分担者による研究会を通して,各自が得られた成果に関する情報交換がなされている。さらに,各自がまとめた論文等を分担者全員で検討することによって,新たな視点や問題点を抽出することができている。ただし,オンラインでの開催のため,細かい意見交換が不足している面もあり,今後の課題である。得られた成果は,すでに何編かの研究発表や論文としてまとめられており,学会等での成果発表は順調に行われている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も今年度と同様の体制で研究を進める予定である。 1.テーマごとの分析 用例収集および分析の対象を名詞止め文から述語なし文,倒置文にも広げ,文末に述語がない文の特徴について分析を進める[生越]。数量詞を含む名詞的表現と拡張型コピュラ文,存在文との関係性を追究し,名詞止め文の特徴を探る。韓国語で名詞止めになりやすい慣用表現に関するデータの収集,日本語との対照分析を進める。各構文に対し,意味論・語用論的にまとまった記述を目指す[金]。Netflix,地上波の番組から日韓の例文を収集し,不完全な文の機能,事柄に関する諸情報が言語化される過程に注目しながら,談話とジャンル・メディアの関係を分析する[尹]。日本,韓国でSNSのデータ収集及び使用者インタビューを行い,SNSで用いられる「不完全な文」とその機能,使用者意識を質的かつ量的に明らかにする[新井]。前年度に得られた中世韓国語の「不完全な文」に関する新たな知見について調査・研究を進め,論文にまとめる[河崎]。 2.データの収集 前年度と同様,各自が分担して,Netflixなどのコンテンツ,地上波の番組[尹],ドラマ台詞,小説[生越],現代語コーパス一般[金],SNS [新井],歴史コーパス等[河崎]から,「不完全な文」のデータを収集する。 3.研究会開催および学会での成果発表 年4回程度,研究会を開催し,各自のテーマの進捗状況を報告するとともに,各自の研究成果について意見交換を行う。また,テーマに関連する研究を行っている研究者を研究会に参加してもらい,その研究状況を聞くとともに意見交換を行う。さらに,得られた研究成果を日本や韓国等の関連学会で発表,あるいは学会誌に投稿する。
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