2022 Fiscal Year Annual Research Report
Extending the Inclusive Leadership Concept - Toward Managing Diverse Subordinates
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21H00745
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
坂爪 洋美 法政大学, キャリアデザイン学部, 教授 (10329021)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
島貫 智行 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 教授 (40454251)
松浦 民恵 法政大学, キャリアデザイン学部, 教授 (60570778)
武石 惠美子 法政大学, キャリアデザイン学部, 教授 (70361631)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 管理職 / リーダーシップ / 部下の多様性 / 働き方の多様性 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に実施したインタビュー調査の分析を行った。インタビューでは性別・年齢・働き方について多様な部下を持つ管理職を対象として、①多様な部下それぞれへのマネジメント上の工夫、②マネジメント上の困難、③人事制度や部長クラスの上司の関与について聞いていた。①②についての分析からは、以下2点が明らかになった。第1に、マネジメントが難しい対象としては、自らよりも年齢の高い部下と、20歳代の若手部下を指摘する管理職が多かった。インタビュー対象の管理職はほぼ男性であり、日本企業で「部下の多様性」という場合には、女性社員を指し示す時期も一定期間存在し、現時点でもその傾向は続いていると考えられる。しかしながら、管理職は、「女性部下」という属性以上に、「年上の部下」ならびに「自分と異なる価値観をもつ若手部下」といった「年齢」という属性に基づく部下の多様性に、マネジメントに難しさを感じていることが明らかになった。 第2に、管理職としての業務を遂行するための時間配分は管理職ごとに大きく異なった。例えばプレイヤー業務に50%以上の時間を割いている管理職もいれば、いわゆる管理業務に多くの時間を割いている管理職もいた。管理職のプレイング・マネージャー化が問題視されているが、実態は多岐にわたる。しかしながら共通する傾向として、現時点での「部下育成」にかける時間割合の高低に関わらず、「部下育成」に現時点よりも多く時間を割きたいという意向を持っていることが認められた。このことは管理職が担う様々な役割の中で、部下マネジメントという役割の比重が高まっていることを反映していると考えられる。部下マネジメントという役割の比重が高まる背景には、部下の多様性が高まりを通じたコミュニケーションの複雑化と、若手社員を中心としたキャリア意識さらには企業のキャリア形成の変化が存在すること考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
インタビュー調査の分析に想像以上の時間を要したことが主たる理由である。現時点でもインタビュー調査の分析は完了しているとは言い難い。時間を要している主たる理由はインタビュー調査実施以前に想定していた回答内容と、インタビュー実施時に管理職から発話された回答内容の間に、想定以上の乖離が発生したことである。調査実施時点ではインタビュー対象となる管理職の条件をかなり厳密に絞り、特定の条件(①ダイバーシティ経営に積極的な企業に所属する管理職、②管理職候補となる年代層の女性部下をもち、その中に育児と仕事を両立している女性部下を含む管理職)を満たす管理職のみを対象とした。その意図は「多様な部下」を代表する属性と女性部下に焦点を絞った上で、多様な部下をマネジメントする上での特徴や難しさを明らかにすることであった。しかしながら、想定とは異なり、部下の多様性として「年齢」に注目する発言がそのほとんどであった。 結果として、インタビュー結果の解釈に際して、①分析方針の再検討と、②追加での文献調査が必要になった。分析方針については、性別だけでなく年齢も「属性」に該当することから、部下の属性の多様性がもたらす管理職のマネジメントを明らかにするという形で方針をやや拡大した。その結果、それまで性別という属性に限定して行なっていたダイバーシティ・マネジメントの文献調査に加えて、年齢を中心としつつも、これまでよりも広げて属性全般の多様性に注目するダイバーシティ・マネジメントについての文献調査を行うこととした。また、調査者自身が初めて管理職という個人に対してインタビュー調査を実施したこともあり、分析過程で、インタビュー調査の解釈方法について、改めて文献調査に戻り確認する必要が出てきたことから、これについても実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
インタビュー調査の分析に想定以上の時間を要していることは事実だが、分析を通じて改めて多様な部下を持つ管理職が置かれている状況ならびに、「多様な部下」に対する管理職自身の認識等について理解し、視野を広げることができた。拙速な分析とならないように引き続き、文献レビューの実施を通じて得た知見と照らし合わせながら分析を行うこととする。また、未だ分析しきれていない視点もあることから、分析の範囲を広げることも検討している。 さらに、分析の過程で人事施策からの影響、ならびにより上位の役職者の関わりの重要性を示唆する知見も得られていることから、これについても検討を行う予定である。
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