2021 Fiscal Year Annual Research Report
Effects of joint action on task performance in persons with intellectual and developmental disabilities
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21H00886
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
葉石 光一 埼玉大学, 教育学部, 教授 (50298402)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
八島 猛 上越教育大学, 大学院学校教育研究科, 准教授 (00590358)
大庭 重治 上越教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (10194276)
池田 吉史 上越教育大学, 大学院学校教育研究科, 准教授 (20733405)
浅田 晃佑 東洋大学, 社会学部, 准教授 (90711705)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 知的・発達障害児・者 / ジョイント・アクション / 共行為者 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は、知的・発達障害児・者を対象として予定されていた実験が実施できなかった。そのため、研究の進捗は遅れている状況である。ただ、必要な予備的実験を実施し、新型コロナウィルスの感染状況が改善されれば、実験の規模は縮小せざるを得ないものの、ある程度の遅れを回復することは可能である。また本年度は、知的障害児・者を対象としたジョイント・アクションの研究がほとんどないことから、知的障害児の学習活動におけるジョイント・アクションの効果を行動観察によって検討した。具体的には、知的障害を伴うダウン症児1名に対して9ヶ月間にわたって実施した書字学習支援での共同活動場面の再分析を行った。この学習支援の過程では、支援者が対象児に手紙を書き、それに対する返信を書いてもらうことを目標とする環境整備が行われた。ただこの支援は、対象児に対する個別の支援ではなく、同じく手紙をもらって返信を書く共行為者を存在させるようにしていた。その中で、対象児の書字行為は、周囲の様子を手がかりとしたものから、次第に自発的なものへと徐々に変化していった。また支援者からの手紙に対する返信を自発的に書くようになる中で、書こうとする内容をあらかじめ宣言して書く様子や、周囲の子どもの書字に見られた誤りを指摘し、正しい文字を教えてあげる様子などが見られた。これは知的障害児において課題とされるプランニング(書こうとする内容の宣言)や動機付けの問題を、共行為者がいる中でクリアするきっかけを掴んだと見られるものであった。一般に、知的障害児・者には、行動を自らプランニングし、調整する実行機能や、行動や自らの認知過程に対する信頼の低さからくる動機付けに課題があるとされる。本研究の結果は、共行為者が存在するジョイント・アクション事態が、知的障害児・者の認知・行動上の課題を克服する手立てとして有効である可能性を示唆していると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和3年度は、大学の夏季休業期間を利用し、必要な実験を行う予定であった。この実験では、対象者にゴーグルタイプのアイトラッカー(視線追跡装置)を装着し、実験中の視線の動きを結果の分析に用いる予定であった。しかし、新型コロナウィルスの感染拡大が進む中で、身体接触を極力減らす必要があるのではないかとの懸念から、非接触型の装置への切り替えを検討した。ただし、非接触型の装置で測定できる視野範囲は狭く、実験事態として非常に不自然な行動制限を行う必要があり、機器の選択、実験デザインの練り直しに多くの時間を要することとなった。また年度当初は緊急事態措置等が解除されていたが、新型コロナウィルスの感染拡大に対する懸念から、8月上旬に申請者が居住する埼玉県において緊急事態措置が出され、必要な実験を行うことが不可能となった。しかし、年度の後半には感染状況が改善されたため、定型発達の成人を対象とした実験を開始することができ、知的・発達障害児・者との比較データの収集を行うことができた。さらに、本研究では知的・発達障害児・者の学習環境における、他者との共同の意味を探求することを目的としており、これに関連する申請者らの教育実践のデータを本研究の内容に位置付けて分析し直す作業を進めた。これは、実験計画の再検討の材料を得ることに繋がった。以上のように、知的・発達障害児・者を対象とした実験自体は進めることはできなかったものの、定型発達者を対象とした研究、及びこれまでの教育実践の再吟味による本研究課題の再定義を行うことができた点で、研究の進捗状況を評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、知的・発達障害児・者を対象とした実験を、連携している学校、施設との連絡を緊密にとりながら慎重に進めていく予定である。令和3年度の検討により、頭部に装着するタイプのアイトラッカーではなく、身体非接触型(据え置き型)のアイトラッカーでの研究に変更して研究を行う。現在、新型コロナウィルス感染状況に配慮した実験であることを受け入れ機関に説明の上で同意してもらえるように、学校、施設との研究再開交渉を行なっている。その一方で、個別に対象者を募集する方法を検討している。学校や施設単位では、機関とともに対象者個々の同意を得る必要がある。現在は、新型コロナウィルスの感染状況に対する考え方が個々に異なる中で、機関全体の同意を得ようとすることが難しい状況もあるため、そちらがうまく進まない場合に備えて個別の募集も並行して行う。また、ジョイント・アクションに関する実験研究は定型発達者に限ることとし、知的・発達障害児・者に関する研究は行動観察によって行うことを計画している。
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Research Products
(2 results)