2021 Fiscal Year Annual Research Report
Nonequilibrium Transport Phenomena in Non-Hermitian Systems: Framework of Defining Physical Operators
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21H01005
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
羽田野 直道 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (70251402)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小布施 秀明 北海道大学, 工学研究院, 助教 (50415121)
井村 健一郎 広島大学, 先進理工系科学研究科(先), 研究員 (90391870)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 非エルミート量子力学 / 開放量子系 / PT対称 / 電流演算子 / 左固有ベクトル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、非エルミート系の非平衡輸送現象・伝導現象の理論的枠組みを開発し、それを契機として非エルミート系における物理量の一般論を構築することです。非エルミート系では物理量の定義に注意が必要で、例えば実験に対応する電流演算子が何であるかは不明です。しかし、このような問題意識は広く共有されているとは言えません。本研究では、カレント演算子の定義についての問題意識を持つことから出発し、非エルミート系に対する輸送現象の実験に正しく対応する理論を開発します。最初に、非エルミート系の両端にエルミートな電極・熱浴をつけた状況をつくり、ランダウアー公式を使って輸送現象を考えます。次に、ランダウアー公式と線形応答理論・ケルディッシュ形式との対応を用いて、非エルミート系に相応しいカレント演算子を導きます。その成果を踏まえて、より一般に物理量の演算子をどのように定義するか明らかにします。 令和3年度は、PT対称な非エルミート系の電流演算子について、その系の右固有ベクトルと左固有ベクトルで期待値をとると電流がゼロになること、一方で右固有ベクトルとそのエルミート共役で期待値をとると有限値になることを発見しました。前者においては、問題となっている系を閉じた非エルミート系と見なしているために電流が流れるはずがないと理解できます。一方で後者では、問題となっている系が開放量子系であり、大きなエルミート系の一部なので、電流が流れると理解できます。なお、後者では、右固有ベクトルは互いに直交しませんが、それは部分系で計算を行っているからであり、全体のエルミート系で計算すれば直交するはずだという理解も得ました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電流演算子について、基本的な理解を得ました。本研究の申請時点ではかなり混乱していた概念をきちんと整理できたのは大きな進歩であると自負しています。今後の進路が明確になりました。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、初年度の概念的な理解を更に進歩させ、一般の非エルミート系での議論へと拡張します。特にHatano-Nelson模型のように非対角に非エルミート性が入っている系への拡張を試みます。また電流だけでなく、一般に流れの演算子についても議論を進めます。
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Research Products
(11 results)