2021 Fiscal Year Annual Research Report
Serpentinization and carbonation in the mantle wedge by seawater-originated subduction-zone fluids
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21H01178
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
川本 竜彦 静岡大学, 理学部, 教授 (00303800)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
市山 祐司 千葉大学, 大学院理学研究院, 准教授 (90625469)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 蛇紋岩海山 / カルサイト / 流体包有物 / マイクロサーモメトリー / 均質化温度 / 塩濃度 |
Outline of Annual Research Achievements |
マリアナ前弧域には数多くの蛇紋岩泥海山が存在する。本研究では、蛇紋岩泥中に含まれる炭酸塩鉱物の流体包有物を解析した。マリアナ前弧域の蛇紋岩泥海山岩石中のカルサイトに存在する流体包有物を分析することで、プレート境界流体の化学組成に束縛条件を与えることをめざした。 ラマン分光法によって流体包有物は水を含む気液二相から成ることを確認した。マイクロサーモメトリー法で測定した流体包有物の塩濃度と均質化温度はそれぞれ、海溝に近い方から、Yinazao海山は4.8 wt.% NaCl当量と212℃(n = 1)、Fantangisna海山は3.0 ± 0.7 wt.% NaCl当量と155 ± 31℃(n = 33)、Asut Tesoru海山は5.9 ± 1.9 wt.% NaCl当量と184 ± 62℃(n = 26)、South Chamorro海山は3.7 ± 1.3 wt.% NaCl当量と280 ± 46℃(n = 38)を得た。 流体包有物の均質化温度は、測定数が1点であるYinazao海山を除くと、 Fantangisna、 Asut Tesoru、South Chamorro海山試料は、海溝からの距離に従い単調に上昇し、蛇紋岩泥海山直下のプレート境界推定温度に近いため、流体包有物はカルサイトに取り込まれたプレート境界流体であろうと提案する。 これに対して、流体包有物の塩濃度は海溝からの距離に従い単調には変化せず、上昇した後に減少する。これは、海溝からの距離に応じて沈み込む海洋地殻中の変成鉱物の組み合わせが変化することと関連づけられるのではないかと推論する。Asut Tesoru海山下では、塩素を含まない含水鉱物のローソナイトが存在し、South Chamorro海山下では、塩素を含む角閃石の存在比が高くなるなど、脱水分解反応によって生成される水流体の塩濃度が変化すると提案する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マリアナ前弧域に数多くの蛇紋岩泥海山が存在することは、昔から石井輝秋博士の先駆的研究で知られていた。近年までに、蛇紋岩に含まれる蛇紋石やスピネルの研究は既になされていた。本研究では、蛇紋岩泥中に含まれる炭酸塩鉱物とその流体包有物に注目し解析することによって、プレート境界流体の化学組成に束縛条件を与えることができた。 本研究を実施することで、沈み込み帯のプレート境界流体による蛇紋岩化と炭酸塩化がほぼ同時に起こっていることを示すことができた。また同時に、海溝からの距離に応じて、温度は単調に増加するのに対して、塩濃度は一旦上がった後に下がることを見出した。これは流体の供給元になった含水鉱物の脱水分解反応に応じて、生成される水流体の塩素と水素の比が異なるからだろうと推論する。仮にそうであるとすると、プレート境界流体の化学組成の圧力変化を示すユニークで意義がある研究成果である。 また、研究前は、蛇紋岩化作用で蛇紋石に塩素が吸収されることで、蛇紋岩化作用を経た水流体は より真水に近いと想像していた。この仮説は分析によって否定することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
高温度高圧力条件での二酸化炭素混合流体とマントル岩の炭酸化反応を理解するための準備を開始した。そのために水熱合成実験装置を設置した。現在、予備的な実験を開始した。今後、蛇紋石(アンティゴライト)とカンラン石に、二酸化炭素と水を加えて高圧高温条件での反応を解析したい。また、カルシウムを加えて実験を行うことで、MgO-SiO2-CaO-H2O-CO2系での相平衡図を作成したい。実験装置は200MPa、600℃までしか出せないが、熱力学計算を行うことで高圧条件に外挿することが許されると考える。また、実験と同時に天然の流体包有物の記載も並行して実施する。それによって、天然の流体の圧力条件を知ることが可能となる。その際は、(1)流体包有物の均質化温度を測定することで流体の密度がわかる。(2)泥質変成岩の温度はグラファイトのラマン測定で推定できるなど、温度に制約があれば理想である。(3)その温度を流体包有物の密度の等体積変化曲線に適応すると流体包有物が形成した圧力がわかる。(4)つまり、流体包有物の均質化温度を知ることとグラファイトの変成温度を知ることで圧力を知ることができる。
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Research Products
(5 results)