2021 Fiscal Year Annual Research Report
原子レベルの構造制御技術開発によるダイヤモンドMOSFETの高移動度・高耐圧化
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21H01363
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
松本 翼 金沢大学, ナノマテリアル研究所, 准教授 (00739568)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ダイヤモンド / MOSFET / パワーデバイス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、極めて高いチャネル移動度・耐圧が期待できる反転層ダイヤモンドMOSFETによる省エネ社会構築を目指し、ダイヤモンド半導体の新規デバイス作製プロセスの開発により、構造最適化を行い、SiCを超えるチャネル移動度と耐圧を達成する。具体的には、チャネル部における原子レベルのダイヤモンド表面荒れという高性能化を阻害する課題を解決するため、Si半導体等の従来からあるデバイス作製プロセスと、CVD(化学気相成長)法による独自のラテラル成長技術・ノウハウ、Ni触媒エッチングによるダイヤモンド加工技術を組み合わせることで、新規デバイス作製プロセスの開発に取り組み、次世代パワーデバイス、SiC-MOSFETの最高値を超える200 cm^2/Vsを超えるチャネル移動度とSiCの物性値を超える3 MV/cmの耐電界を達成する。 ダイヤモンド下地基板の伝導型による成長速度差を用いて埋込ソース・ドレイン型のMOSFETの作製に成功した。この結果、従来のダイヤモンドMOSFETにおいてはソースから反転層チャネルへのホール注入がデバイス特性を大きく制限していることが明らかとなった。また、CVD法のラテラル成長技術を用いて高濃度層の埋込構造、Ni触媒エッチング法を用いた高濃度層の埋込構造の作製にも成功した。これらを応用して、MOSFET構造を形成するためには、表面ラフネスの低減や平坦化面の拡大が必要であるという道筋が明確となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ダイヤモンド下地基板の伝導型によるCVD法における成長速度差を評価した。その結果、ダイヤモンド膜中のホウ素が成長を抑制することが分かってきた。このノウハウを用いて埋込ソース・ドレイン型のMOSFETの作製に成功した。メタルマスクを介したCVD法による成長によって形成された飛出し型のソース・ドレインを有する従来構造のダイヤモンドMOSFETと比較すると、埋込ソース・ドレイン構造によって接触抵抗が大きく低減することが分かった。この接触抵抗は、ソースから反転層チャネルへホールが注入される際の接触抵抗を意味している。この大きな接触抵抗がデバイス特性を大きく制限していることが明らかとなった。また、CVD法のラテラル成長技術を高濃度ホウ素ドーピング技術にも拡張することに成功した。実際に、高濃度ホウ素ドープラテラル成長技術を用いて高濃度層の埋込構造の形成に成功した。今後は、本技術を用いたMOSFET構造の形成を目指す。そして、Ni触媒を用いたダイヤモンドエッチング技術においては、低温でエッチングレートの低速化を実現するとともに、不純物濃度依存を調査した。これらの結果をもとに高濃度層の埋込構造の作製にも成功した。今後は、この技術でもMOSFET構造の形成を目指す。一方、これらの新たなMOSFET構造を形成するためには、表面ラフネスの低減や平坦化面の拡大が必要であるという課題が明確となった。
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Strategy for Future Research Activity |
CVD法による高濃度ホウ素ドープラテラル成長技術を用いたMOSFET構造の形成、Ni触媒を用いたダイヤモンドエッチング技術におけるエッチング面の平坦化、縦型MOSFET構造構築に向けた積層構造の最適化を中心にダイヤモンドMOSFETの高性能化に関する研究を進める。
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